東アジア大戦。その43。中国の反撃。
御伽噺:第43話です。中国の精鋭、第17軍団はすでに活動を開始していた。インターネットによるハッキングである。韓国軍や日本の自衛隊のサーバーに密かに忍び込み、その軍事機密や情報管理システムを調べ上げ、戦術を組み立てていた。命令一下、相手の命令系統を混乱させ、電光石火に勝負を決めるのだ。すでに、ソウルまでの侵攻スケジュールは立っている。「中国軍が甘ちゃん解放軍だけでないことを思い知らせてやる」 司令官は不敵な笑みを浮かべていた。動員命令とともに軍団は作戦を開始した。偽の情報を流し、北から人民解放軍の大部隊が進撃してくるように装った。サーバーに侵入したコンピュータ・ウイルスによって、衛星からの画像データまで偽装されていた。韓国軍は完全に不意を突かれた。偽の情報とは知らずに、あわてて幻の大軍に向かって北上する。その隙に第17軍団の各部隊は占領された地域に向かって密かに展開していった。彼らは遠隔操作できる敵の兵器コントロールシステムにインターネット経由で侵入すると、データを書き換え、同士討ちをするようにセットした。そして、相手の隙を待つ。「攻撃開始だ」 司令官の短い命令が下った。韓国軍は爆発と阿鼻叫喚に包まれた。まったくの背後から、それも探知システムや味方識別のシステムまで混乱させられた状態で、攻撃を受けた。ハイテク歩兵も情報網が破壊されると、まるで盲人だった。情報端末に依存していた彼らは、真っ白になったモニターに困惑しているうちに、目の前に実際にあらわれた敵にも反応できず、突っ立ったまま、集中射撃や手榴弾を受けて倒されていく。各部隊との連絡は遮断され、韓国軍司令部はパニックに陥った。新手の人民解放軍が精鋭第17軍団の後を大挙して進撃してきた。ハイテクを封じられた韓国軍を単純な人海戦術で撃破していく。戦闘は熾烈だった。特に第17軍団の兵士たちは冷酷で、敵の投降など一切認めず、逃げ遅れた韓国軍の兵士はもちろん、従軍していた民間人にも容赦がなかった。赤十字の職員もスパイとして殺され、都合の悪い報道をするジャーナリストたちも諜報員を放って暗殺していく。まさに皆殺しだった。エリートでありながら自国の指導部から疑いのまなざしで見られていた鬱憤を晴らすがごとく、その悪魔的な攻撃力を発散させたのだ。中国軍の参謀総長もその報告を聞き、味方ながら背筋の凍りつく思いがした。第17軍団の大暴れによって、韓国軍は完全に崩壊し、わずか10日でソウルは中国軍の手に落ちた。虐殺は各所で発生した。数万人の市民がこの世から消えていた。続く。