大気汚染長期曝露で冠動脈疾患リスク増加?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘大気汚染長期曝露で冠動脈疾患リスク増加?’という報告です。 米・University at Buffaloの研究者らは、中国人8,000例を対象に中国における大気汚染と冠動脈アテローム硬化の関連を検討。その結果、微小粒子状物質(PM2.5)と二酸化窒素(NO2)への長期曝露により、冠動脈アテローム硬化の指標である冠動脈石灰化(CAC)スコアの上昇が認められたと発表した。大気汚染と冠動脈性心疾患(CHD)の関連についての研究は、これまで汚染レベルが比較的低い欧米では行われていたが、汚染レベルが高い中国では不足していた。 そこで同研究者らは、中国でCHDが疑われCAC評価のために心臓CTを施行した25~92歳の患者8,867例(平均年齢56.9歳、男性53.6%)を登録。対象の居住地における大気中のPM2.5、NO2、オゾン(O3)の年間平均濃度、居住地から最も近い車両が通る道路までの距離を算出し、これらの大気汚染因子とCACスコアとの関連を検討した。解析の結果、PM2.5およびNO2への曝露とCACスコアには独立した関連が認められた。PM2.5濃度が30μg/m3上昇するごとにCACスコアは全体で27.2%上昇した。CACスコアの上昇幅は、男性42.2%、60歳超の高齢者50.1%、糖尿病患者62.2%でより大きかった。NO2濃度が20μg/m3上昇するごとにCACスコアは全体で24.5%上昇した。CACスコアの上昇幅は、男性45.7%、60歳超の高齢者55.5%、糖尿病患者31.2%でより大きかった。また、O3への曝露および居住地から道路までの距離とCACスコアにも独立した関連が認められた。O3濃度が15μg/m3上昇するごとにCACスコアは9.0%上昇し、道路までの距離が50%減少するごとにCACスコアは2.4%上昇した。大気汚染の指標を四分位に分けてCACスコアとの関係を検討すると、ほぼ線形の濃度-反応曲線関係が認められた。 以上の結果から、同氏は「この研究は、大気汚染による冠動脈アテローム硬化がCHD死リスク上昇の一因であることを示唆する可能性がある」と述べ、「この知見は、検討が切望されていた中国だけでなく、世界の大気汚染に関する基準設定の裏付けとなるエビデンスを提供するものであり、大気汚染物質によるCHDへの影響の理解に役立つはずだ」と結論している。さらに同氏は「中国では心血管疾患が死因の40%超を占め、大気汚染物質は心血管疾患に極めて大きな影響を及ぼしている可能性がある」と指摘し、「PM2.5とNO2の濃度を中国の基準値まで引き下げて大気の質を改善することが、寿命の延長に役立つ可能性がある。ただし、NO2への曝露がCACに及ぼす影響はNO2の基準値未満の対象に限定した解析でも認められたことから、現在の基準値を再検討する必要があるかもしれない」との見解を示している。 以前は日本でも大気汚染が問題視されていましたが、環境基準などの設定によりかなり改善されています。その状態が今の中国なのでしょうが、上述の様に心血管死が死因の40%超を占めるという現実を考えると早急に解決に向けた努力が必要なのかも?しれません!