気候変動による健康被害は小児で最大?
おはようございます。福島市 さとうクリニック内科・消化器科の佐藤です。今朝は‘気候変動による健康被害は小児で最大?’という報告です。 世界保健機関(WHO)を含む35機関の専門家120人が行っている、気候変動に伴う健康被害に関する共同研究プロジェクトLancet Countdown on Health and Climate Changeの2019年度版報告書が発表された。気候変動は既に世界の小児の健康を損ねており、パリ協定における「産業革命前からの世界の平均気温上昇を2℃未満に抑制」という目標を達成しない限り、気候変動が全世代の健康を左右するようになるだろうと警告している。 報告書によると、世界が「成り行き任せ」で二酸化炭素(CO2)排出量と気候変動を現状のままに放置すれば、今年(2019年)出生した児が71歳になるまでに世界の平均気温は4℃上昇すると予測され、気温上昇が生涯にわたり健康を脅かす事態になるという。また、気温上昇や長期の干ばつにより農作物の収穫量は減少し、食料安全保障が脅かされ食料価格が高騰すると予測している。過去30年間で、世界の穀物生産量はトウモロコシ(-4%)、冬小麦(-6%)、大豆(-3%)、米(-4%)のいずれも減少した。この影響により、乳幼児の栄養不良リスクが高まるという。 化石燃料の燃焼による世界のCO2排出量は増加し続けており、石炭によるエネルギー供給量は以前の減少傾向から増加に転じた。2016年の世界の微小粒子状物質(PM2.5)曝露に関連する早期死亡は290万例で、石炭から排出されるPM2.5によるものだけで44万例超に上った。大気汚染は、肺が発達の過程にある小児に特に大きな影響を及ぼす。また報告書では、今年出生した児が成人を迎えるころには、極端な異常気象現象が増加すると予測している。2001~04年以降、196カ国中152カ国で山火事の被災者が増加しており、山火事による1人当たりの経済損失は洪水の48倍に及ぶ。昨年は観測史上4番目に暑い年であり、熱波に曝露した65歳以上の高齢者は2017年と比べて6,300万人、2000年と比べて2億2,000万人も増加した。日本では、昨年に熱波に曝露した65歳以上の高齢者は3,200万人に上ったと推定され、65歳以上のほぼ全員が熱波の影響を受けたことになる。一方、家庭用エアコンの普及率が上昇したことで、熱波関連死の回避率も上昇した。2016年の日本における家庭用エアコン普及率は90%超、熱波関連死の回避率は66%超であった。 さらに報告書では、「次世代の健康を守るために劇的かつ迅速な変化が必要である」と警告。「パリ協定の『気温上昇を2℃未満に抑制』を実行することで、今年出生した児が31歳になるまでにCO2排出量をほぼゼロにするNet Zero Emissionが達成可能。さらに、2019~50年に化石燃料の燃焼によるCO2排出量を前年比で7.4%ずつ削減していけば、気温上昇を1.5℃未満に抑制可能」としている。 気候変動が時差代を担う子供達に甚大な影響を及ぼしかねないというのは由々しき問題です。CO2を最も排出している中国や米国などがその規制に反対しているという現実を早急に解決の方向に導くことが大事かも知れませんね。