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2009.12.20
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カテゴリ:現代社会
 冬山の遭難は珍しい出来事ではない。冬山に出かける人間は登山の専門家であり、装備や登山技術に問題があることは少ない。それでも、趣味の段階をはるかに超える難行が待っている。冬の富士山は、静かな気象条件だと最高のトレーニング場になる。ヒマラヤ登山などに挑戦する人々は、冬の富士山で経験を積むという。
 ひとたび風が吹くと、冬季の富士山の環境は激変する。猛烈な吹雪が起こり、人間は視界を閉ざされて身動きできなくなる。零下数十度の寒さが体温を奪い、行動の自由が奪われる。テントは強風で吹き飛ばされやすい。吹雪に遭遇したときは、雪に穴を掘って朝になるのをじっと待つしかない。機転を利かして冬山を生き残った人々は多い。テントの設営段階では風がなくても、夜中に吹雪に激変することもある。天気予報や山岳情報を入手することが運命を分けてしまう。とくに前線が接近するときは、用心深く行動しないと遭難に巻き込まれる。
 富士山で二人が遭難し、一人が下山したいうニュース段階までは、普通の冬山遭難事件だった。ところが、生き残ったのが片山右京だということが分かると、空気が一変した。右京の帰還を喜ぶというよりも、遭難した二人を見捨ててきたのではないかという疑惑にマスコミの関心が集中してしまった。二人を見捨てて逃げ出したのではないかと詰問されたのである。右京が救助されたのは2200メートルというから、キャンプを張ったのは3000メートル近い高さだろう。富士山の場合、3000メートル近くは急斜面の岩場であり、壁にある隙間にへばりつくようにテントを張るしかない。
 片山右京の証言によれば、夜間に二人用のテントが風に吹き飛ばされている。テントの面積の大きいほど危険性が増す。二人は200メートルほど滑落して、岩場に生存しているのを右京が発見した。200メートルの崖を滑り落ちると身体のダメージが大きく、打撲で動けない。手当の方策もなく、二人が息を引き取るのを確認したという。そこで、右京は下山を決意した。生き残るには、それしか方法がなかったのは事実だろう。
 有名人であるゆえに、注目を集めて批判される事は多い。微妙な言い回しながら、どうして一人だけが生き残ったかを右京は問われている。テント設営は自己責任であり、岩にボルトを打ち込んで固定しても、強風には役に立たない事実がある。岩と氷だけの自然が相手では、人間にできることは限られている。冬山を趣味にする人々は、生命の危険を覚悟の上の行動なので、家族や周囲の制止を聞くこともない。二人が富士山で遭難したのは運命であり、片山右京が生き残ったのも運命だったと悟るしかない。





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Last updated  2009.12.21 11:11:25
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