著作権という名の「壮大な社会実験」
『著作権とは何か』集英社新書(著者:福井健策|出版社:集英社)著作権に関する入門書ですが、概説書ではありません。これを読めば著作権の全てが分かる、という類の本ではありません。編集著作物・データベースの著作物、頒布権の消尽などについては全く解説されていませんし、内容に偏りがあります。この本は著作権について考えるとき必要な「考え方」の入門書です。「オリジナル」とは何なのか?現代において、「完全なオリジナル」など存在するのか?そんな根源的な問いを著者は投げかけてきます。「守られるべき権利」と「許されるべき利用」のバランスをいかにしてとるのか、という視点から著作権を捉えなおします。「著作権ビジネス」という言葉がもてはやされ、産業保護という側面から語られることが多くなってきていますが、著者は「豊かで多様な文化の創造と、人々のそれへのアクセスをどう守るか」という視点から著作権を捉えることに拘ります。いろいろと考えさせられる点の多い本でした。