軽度構音障害の対照語(ここでは、/r/と/d/)の訓練を紹介。
実施したことは、/r/と/d/の対照語を発音してもらった通常の訓練だが、自分なりに少し工夫した。
聴取するSTが正確な判断ができるようにした。
軽度構音障害での訓練の経過を判定しやすいように考えた。
<今回の対象者>
◆脳梗塞にて、片麻痺、注意障害(軽度)、構音障害(軽度)
◆発話明瞭度は1レベル。歪みも少ない。聴覚的には、日常会話は問題ないと思われるも、本人は「まだ、しゃべりにくいことがある」と。
◆舌の筋力は十分あり。 /r/音が/d/音に置換することあり。
<目的>
◆/r/音と/d/音の明瞭化
◆STが推測なしに聴取することにより、軽度構音障害の程度や、訓練経過を正確に判断する。
<方法>
◆下記の対照語のカードを対象者に発音してもらい、STが聴取し、当てる。
◆STが推測できないように、カードはランダムに並べる。
◆また、出題する語句の種類が決まっていると、既出の語句からSTが予測してしまうため、表裏もランダムに並べる。
(例 : 「偉大」と「依頼」が1度ずつ出ることもあれば、「偉大」が2度出ることもあり、STは推測できない)
<期待する訓練効果>
軽度構音障害で歪みも少ないため、訓練効果がわかりにくが、この訓練では数値で現れるため、効果がわかりやすい。
対照語を比べて言うより、結果がわかりやすい。(自分では言い分けできたつもりでも、実際の聴取では間違って聞こえたことがわかる)
<結果>
訓練途中だが、この患者のある1回の訓練では、STの聴取誤りが1個、迷うも聴取可が4個、自信を持って聴取可が31個であった。
<訓練語選定とカード作成>
◆/r/と/d/の対照語の内、出来る限りイントネーションが同じものを選定。
◆使用頻度が高いものを選定
◆語頭、語中、語尾にくる語を選定
(「スピーチリハビリテーション(1) 西尾正輝 著」では、語頭のみのため、語中、語尾も追加)
◆それぞれの対照語を表裏にして、2組作成する。
偉大 依頼
枝 鰓
管 蔵
相談 総覧
脱臼 落球
電線 連戦
代行 来航
抱く 楽
乱れる 見られる
無駄がある むだがある
家電 可憐
電線 連戦
袖 それ
撫でる 慣れる
派手 晴れ
伝統 連投
独歩 六歩
堂々 労働
井戸 色
稼働 過労
毒 六
工藤 苦労
行動 功労
スピーチリハビリテーションの該当ページを患者に示し、ランダムに発音してもらうこともあるが、対照語を交互に言ってしまうこともあり、それを聴取するST側が推測してしまうことがある。