注意障害の訓練には、APTの訓練方法や、数字つなぎ、抹消課題など様々なものがあります。
実際は、注意障害では、数字つなぎ、抹消課題、計算など行うことも多いです。
生活動作での注意機能を考えると、歩行でのつまずき・転倒を防ぐ、ベッド・車椅子・トイレなどの移乗動作時に必要となることも多いと思います。
これらには、身体機能に加え、注意機能、記銘力、遂行機能など様々な能力を必要とします。注意機能としては、視覚的な注意機能がより大切と考えます。
具体的には、私たちが歩行しているとき、視野に入っている障害物(段差、壁からのでっぱり、前からくる人など)を知覚し、転倒しないように歩いています。
もちろん身体機能が十分なら、少しぐらい接触したり、つまずいても転倒せずに済むでしょうが。
これは、どんな注意機能か?
→ 視野全体から、脳にある「(その時に)危険!」と無意識に感じるものに対して注意を向けることができる機能となるでしょうか?
通常の抹消課題では、主に、1つずつに注意を向け、対象の記号であるかを確認しながら進めていくため、注意機能のなかでは、持続性注意機能、選択性注意機能を主に使っていることになるでしょう。
対象の記号であるかどうかの記銘力も必要ですし、対象の記号が増えると、同時処理の要素も含まれてくると思います。
数字つなぎでは、探索に時間がかかる人は、狭い視野で1つ1つ探していることが多いと思います。
TMT-Aが短時間で可能な人は、やや広い視野で探索することで、時間が短縮されていると思います。
つまり、何が言いたいかというと、広い視野で探索する訓練が必要ではないかと。
しかし、注意障害のある人に
「広い視野で、1~25を探してください」といっても、実施するのは難しいです。
そこで、以下の課題を作成しました。
縦A3の用紙に横2×縦4マスの表を作成する。A3を縦にして横4×縦2枚で壁に貼ります。合計8×8=64マスとなります。
そこに、パッと見てわかる絵や記号を3つずつバラバラに配置します。
絵は、例えば、すべてカラーで、「トイレのマーク」、「緑の三角」、「赤の丸」、「斜線」、「非常口のマーク」などです。
絵は大きいので、老眼の人でも見えます。
64マスなので、21種類×3つ=63個の絵や写真が配置されています。
訓練方法は、ランダムに1種類ずつ絵(写真)を提示し、同じものを3つ指差してもらいます。それを21種類行い、時間を計測します。
この課題では、1つずつ端から探すことはなく、少なくとも4~6個程度は同時に注意を向けて探していると思われます。その中で、指定された絵(写真)と照合し、合致するものを選びます。
これが数字の配列であれば、一つ一つ細かく見ること(13と18の違いなど)が要求されますが、この課題では似ているものが無いため、大まかに(少し広めの視野で)探すことができます。自然とそのような探し方になり、視野を大きく使うと思われます。
3個ずつにした理由は、3個あれば、パッと見たときに2個同時に視野に入って見つけることができる場合があります。
健常若年者なら、1度に全体を見て、同時に3つ見つけることができる難易度です。
元から2つにすると、複数個同時に探せる確率が減るのと、偶然見つけることで、時間の変動があるためです。また、4個にしないのは、探索中、どれを見つけて、どれを新たに見つけたかわからなくなると思ったからです。
すべて、あくまで、私の頭の中での想定ですが。
車椅子からベッドへ移乗するとき、フットレストをあげるのを忘れる患者さんがいます。おそらく、視野には入っていても、それを危険だと認識できないのでしょう。それよりも、先に「移乗すること」に注意が向いてしまっている。フットレストが視野に入ったら、または、歩行中に段差が視野に入ったら、注意を向けてくれないか(違和感を覚えてくれないか)という想定です。