6月は
6月は雨に流されたように、あっという間に過ぎて行きました。紫陽花に色がつくのが遅くて油断していました。とうもろこしをかじりました。甘い水の味がしました。トマトが百円になりました。一年は365日しかなくて、毎日一冊本を読んだとしても、365冊しか読めないのだな、と思います。本を読んでいるあいだ、見ることのできなかった景色について、考えます。聞けなかった音楽について、口に出せなかった言葉について、引き換えたものを考えます。それでも、本が読みたいと思う自分に、あきれて笑ってしまいます。そこにあるのは死んだ言葉だという人がいます。本を読むことで失ったものは確かに多いと思います。けれどそこにある本を私は愛します。今は、なかなか本を手にとることができない毎日です。読みたいな、と恋い焦がれる。私の背筋を伸ばす、ひとつ芯になるもの、それが読書欲。