関西グスタフ・マーラー交響楽団 第9回演奏会(出演:2019/7/15)
マーラーの交響曲全曲演奏を目指して集まった、「関西グスタフ・マーラー交響楽団」。第8番(一千人の交響曲)を昨年クリアし、今回は「大地の歌」にチャレンジです。いよいよゴールが見えてきました。《関西グスタフ・マーラー交響楽団 第9回演奏会》日時 2019年7月15日(月祝)13:00開場 14:00開演会場: 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホールプログラム:交響詩「葬礼」大地の歌(グスタフ・マーラー)チケット料金:1500円(全席自由)独唱:池田香織(アルト)二塚直紀(テノール)音楽監督・指揮:田中宗利管弦楽:関西グスタフ・マーラー交響楽団※未就学児入場不可演奏曲目別の私の演奏位置と使用弓、演奏回数は以下のとおりです。・マーラー:交響詩「葬礼」 (初) 大地の歌 (2回目:オリジナル版は初) 3Pult中2Pult out 独弓、4弦 Extender-C (「大地の歌」のみ使用) 今回のホールは、第1回(交響曲第5番)、第7回(交響曲第4番)以来となるびわ湖ホール(大)。一年おいての登場です。 前回は交響曲だけ(前半に歌曲の演奏がありました)の演奏だったこともあり余り印象に残らなかったのですが、今回は前日のリハーサルから同じ場所(リハーサル室でしたが)ということもあり、ホールの動線の良さを今更のように感じました。楽屋口、搬入口、ホール、楽屋、リハーサル室などが上手く配置されていて、移動距離が短いのです(迷わなければ(笑))。オペラ用に上手く作られたホールだな、と感心しました。財政厳しい中ですが、滋賀県にはぜひこのホールを維持発展させて欲しいものです。それこそ京都のロームシアター作るより、補助金まわして欲しかった。 少し書いたように、このホールはオペラ公演を前提としたホールなので、声との相性が抜群。そのため声の入る4番やこの「大地の歌」はここで、となったのではないかと思います。もちろん声入りと言えば他に2,3,8番がありますが、オルガンが必要な2,8番(オペラ用ホールには、なぜか通常コンサートオルガン設備は付いてません)はシンフォニーホールや京都コンサートホールで、3番は新装直後のロームシアター(こちらもオペラ用ホール)ということで、そのへんはこだわりのマーラーオケらしく、ちゃんとホールも適した場所を選んでいると思います。 びわ湖ホールの大ホールは、客席数1,848名という大きな収容力を誇ります。これだけの客席が、しかも地元でない(今回も一部の演奏メンバーは、前日から泊まり込みでした)このオケで埋まるのだろうか・・と若干不安ではありましたが、地元のスーパーさんとのタイアップなどもあり、また梅雨時にもかかわらず好天にも恵まれ(おかげで隣の京都では、祇園祭が大変な人出だったようです)、お客様の数はステージからざっと推測して800名くらいでしょうか。アマチュアの、しかもホームグラウンドを持たないオケとしては立派なものだと思います。ここまでの演奏の積み重ねが足を運んで下さるお客様を増やしてきたのだと思います。 前回の合唱入り4管という極大編成から一転、独唱の伴奏という歌曲対応に準じたバランスとなるため、管は3管に近い指定があるとは言え、弦楽器は12型サイズとなりました。(高音から 12-11-10-8-6人) ヴァイオリンが上下手両翼に分かれ4プルトで折り返し(で左右対称となります)、ヴィオラが1stヴァイオリンの隣、チェロは2ndヴァイオリンの隣。そしてコントラバスはチェロの後ろ、上手最後方に2列で並びました。結果的に対向配置の高音弦と近代配置の低音弦をミックスしたような形となり、低弦には演奏しやすい配置となりました。管楽器は木管が2列で通常の並び、ホルンは下手に別雛壇、最上段は下手よりに打楽器、上手よりを2段にしてトランペットとトロンボーン&チューバで2列という並び。低音が上手に集まるので、これもアンサンブルしやすい状態でした。(Vnのアンサンブルは、対向配置で遠いこともあり苦労されていましたが。。。) 大地の歌は、ハープ2台とチェレスタが必要で、これらは下手に。マンドリンはピックアップは使わず、2本ユニゾンで弦楽器の団員が持ち替え。このあたりは前回の8番演奏の時の経験を活かしたものとなっています。 コントラバスは6名。5弦が5人、エクステ1人(私)ということで、全員低音拡張が可能でした。並びは前二人、後ろ四人の2列で、後列は雛壇上。広いびわ湖ホールのステージですので、大きな雛壇に乗せてもらい余裕のセッティングでした。おかげで(?)座っている雛壇とエンドピンを刺している雛壇が別々になり、弾いて雛壇が振動するのがわかりにくい、という意外な現象が発生(笑)。譜面台も近くにセッティングできて、ストレスのない、演奏に集中できる(=暴れ放題)セッティングとなりました。 メンバーは前回の第八交響曲の演奏時の8名から3名が抜けて(一人はスタッフ専従へ)、替わりに大学オケ卒業間もないパワフルな方が1名参加(彼はロビーコンサートも対応して下さいました。感謝!)。前回からスライド組が5名ということで気心知れた、しかも全員おっさん(=40代以上男子)ということで、パワー溢れる布陣となりました。 元々本拠地のオケで首席やっていたような人が多くて腕も達者な方が多く、これだけ安定した演奏が自分のオケでいつも出来たらなぁ・・と思わず無い物ねだりしたくなるようなレベルでした。 指揮者は、第1回の演奏会から音楽監督として企画も含め奮闘する田中先生。スコアを読み込みオケを統率するだけで無く、ソリスト・代歌手の招聘などプロデューサーの役目までこなし、マーラーの交響曲全曲演奏、という目標に向けてあと一歩の所まで来ました。 今回は1曲目が純器楽曲ということもあり、声楽のソリストはアルトとテノールの二人。アルトの池田香織先生は、音大出ではない(慶応大学のご出身)という異色の経歴ですが、二期会会員としてオペラやオーケストラで引っ張りだことのこと。今回もアマチュア(音大出のメンバーは数える程)オケ相手、ということもあり、気さくにオケへのだめだし・・もといご指導を下さりながら、余裕と圧倒の声量と表現、楽曲理解で私たちをリードしてくださいました。 テノールの二塚直紀先生は、演奏会場であるびわ湖ホールの「四大テノール」の一角を占める方。前回第八回(一千人の交響曲)に引き続いてお世話になりました。2回目とあってオケとの間もリラックスした感じ(とはいえ、前回はソリストが8名と、「ソリスト団」グループでしたし合唱との総練とかでお祭り騒ぎ状態でしたが・・)でした。声量が素晴らしく、3管のオケが鳴ってもその上を声が通っていきます。しかもリハーサルからテンション高く、当日午前の最終リハーサルの1曲目の本番並のテンションには、こちらが「大丈夫かいな」ビックリしてしまいました。 本番も同じテンションで入ってこられて、ほんとビビりましたが、終盤はさすがにやや落ち着かれた感じでした。 今回は2曲プロ。金管楽器(とコントラバス)が暇な「大地の歌」だけでは欲求不満になる奏者方への配慮か、曲想も考え1曲目には交響詩「葬礼」が取り上げられました。この曲、交響曲第2番(「復活」)の第1楽章が先行して作曲されたときの原型です。エピソードとしてハンス・フォン・ビューローがマーラーのピアノ演奏聞いて耳を塞いで非難した、というのがこの「葬礼」のバージョンだったようです。実際、交響曲第2番として終楽章が構想されたのは、そのハンスフォンビューローの葬儀の時ですから。 曲の骨格はほぼ「復活」第1楽章と同じですが、楽器編成が異なり、細かいところ(経過部分やオーケストレーション)は色々と違いがあります。コントラバスのパート譜だけでも、楽譜の光景は結構違います。「葬礼」のほうは、マーラー特有の執拗な楽器の分割や文字での指示が少なく、奏者の意思に任せるようなところがまだまだ多いと感じました。その部分は、その後を知っている我々にとってしたら、その辺はついつい「復活」をなぞってしまうのですが、楽譜どおりだと違う効果になるところもあり、その辺を強調するかどうかがちょっと不徹底になってしまったのが悔やまれます。 とはいえ、2015年に始めてこのオケで弾かせてもらった「復活」のあの感激を思い出しながらの演奏となり、感慨深いものがありました。けど弦楽器はもう2サイズ大きかったらなぁ。. そして「大地の歌」。高校時代がちょうどマーラー・ブームに重なり、吹奏楽っ子だった私もご多分に漏れずお小遣いを貯めては、長大な演奏時間のマーラーの交響曲のLP(!)を少しずつ買い込んだものでした。その中で私の心をつかんだのは、「復活」(交響曲第2番)とこの「大地の歌」でした。東洋的な諦念や人生の意義など、青春期にハマりがちな要素が、これまた好きだった漢文をベースに書かれた曲とあって、高校の図書館でオリジナルとなる李白の漢詩等を調べて読み込んだものでした。 当時聞いたのは、すでに廉価版として出ていた、ワルター/ウィーンフィルのモノラル盤。モノラルとは言え音は十分良くって、1曲目の微妙なオーケストレーションは距離感まで判る演奏。愛聴するんですが、やはり曲が曲だけに最近は通して聴くのは結構しんどくて(特に第6曲目:終曲)、曲の勉強はCD聴くよりも譜面を見る方が中心になりました。 肝腎の演奏ですが・・やはり6楽章が予想どおり、というか想像以上に難物でした。木管楽器のソロが東洋風の拍節感が薄いカデンツの様につながったかと思えば、3拍子と4拍子が同時に進むところがあったり。昨年シェーンベルクとリーンによる同曲の室内楽編曲版を演奏したときは、そこまでアンサンブルの難しさを感じなかった(というより、オリジナルのパート譜より数段難しく音符も多い編曲譜のため、自分の演奏で必死だったという話しも)のですが、この辺は逆に分担する人、楽器が増えたことで連携の難しさが増したのかも知れません。またラストの消え入るような所は、同じく消え入るように終わる交響曲第9番と違って、最後まで管楽器が入っています(弱音の苦手な管楽器含め)。この辺はプロなら演奏技量で何とかできるんでしょうが、譜面的に厳しい。もしかして初演をマーラーが振っていたら、楽譜に出版前に手を入れたかも知れません。 その他2楽章でもコントラバスのリズム打ち無し(この楽章、コントラバスは音符がわずか4個しかありません)のままで、延々と続くVn達の8分音符と管楽器の旋律。こういうのを同じテンポ感を共有しながら伸び縮みの呼吸を合わせていく、というのはなかなかアマチュアでは難しい・・もう結成して9年となるマーラーオケでも苦闘しました。 逆にビート感があり、楽器も鳴る1,3,4,5曲目などは独唱陣の圧倒的な歌唱と相まって、マーラーオケの実力を発揮できた演奏だったかな、と思います。 ベースパート的には、最後の難しい噛み合わせのところで一ヶ所集団で落っこちた以外は何とかなったのかな、と思います。色々と悔いはありますが、単独のアマチュアオケではなかなか揃わないような豪華なメンバーで練習を積み重ねられ、良い演奏が出来たと思います。 打ち上げは、本番前日にソリストの方とオケ有志でランチをしたのと同じ、びわ湖ホール隣接のレストランHashing DINERにて。私は楽器と聴きに来てくれた嫁との撤収で早々に駐車場を出ないといけないことから、今回も参加を見送ってしまいました。条件的には前回2回に比べて参加しやすかっただけに、残念でした。結局この前日ランチ(大雨にあたり、ホールすぐ隣なのにずぶ濡れでのランチでした)と「復活」の打ち上げしか出られなかったなー。 「大地の歌」も成功裏に終演し、これで声楽入りの交響曲はコンプリートしました。残すは9番、10番(1楽章のみ完成)のみ。慣例で行くと次は来年の体育の日三連休当たりかと思いますから1年以上の間があります(けど次は純粋器楽曲だから、7月の海の日三連休でもいけるかな?)。最後の高い峰、第九交響曲に向けて十分な準備をしていくことになるものと思います。私はマーラーの中でも愛する2曲(復活と大地の歌)を演奏できたこともあり、次はどうするか・・学生時代の記念碑的な演奏に接し(残念ながら降り番)、充実したオケで2回演奏した9番は、練習ですら体力・気力を消耗させるとんでもない曲だけに、身体がもつかどうか・・若者に任せた方がよいかも。過去の演奏経歴です。通算336ステージ目。■マーラー:交響詩「葬礼」 ・(初) ■マーラー:「大地の歌」(シェーンベルク~リーンによる室内楽編曲版)・(2018/7) オーケストラ・クラシーク/高橋 義人 :藤田 大輔/大西 信太郎関西グスタフ・マーラー交響楽団での演奏履歴(通算4ステージ目)です。・第5回演奏会 2015/10 ザ・シンフォニーホール(マーラー:交響曲第2番「復活」)・第7回演奏会 2017/7 びわこホール (マーラー:交響曲第4番他)・第8回演奏会 2018/10 京都コンサートホール (マーラー:交響曲第8番)・第9回演奏会 2019/7 びわこホール (マーラー:「大地の歌」他)