奈良女子大学管弦楽団 第50回定期演奏会 (賛助:2021/12/26)
約2年半ぶりの登場だった前回定期演奏会からさらに2年。ようやく50回の記念定期演奏会の開催にこぎ着けました。ここまでの学生の皆さんの努力は大変だったことと思います。観客は関係者のみでオンライン・ネット配信ですが、無料でYouTube上に1ヶ月公開ということもあり、昨年12月に引き続き映像に残ることになりそうです。《奈良女子大学管弦楽団 第50回定期演奏会》2021年12月26日20時頃から順次当団YouTubeにて動画配信https://www.youtube.com/channel/UCyGX2o6sbq3gqI98vCEVhsA奈良県文化会館 国際ホール関係者のみ完全招待制での有観客開催が決定いたしました!!(今回は一般の方にはご来場いただけません。申し訳ございません。) 「魔笛」序曲/モーツァルト 交響曲第8番 未完成/シューベルト交響曲第3番 ライン/シューマン指揮:木下 麻由加(客演)演奏曲目別の私の演奏位置と使用弓、演奏回数は以下のとおりです。・モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲 (7回目) Bärenreiter新版譜面 2Pult中2Pult out 独弓、4弦 extendor未使用・シューベルト:「未完成」 (11回目) Bärenreiter新版譜面 2Pult中2Pult out 独弓、4弦 extendor-C・シューマン:交響曲第3番「ライン」(3回目) Breitkopf(J.Draheim校訂)新版譜面 2Pult中2Pult out 独弓、4弦 extendor-C 今回の演奏会場は、奈良県文化会館 国際ホール(大ホール)。奈良公園、東大寺、奈良県庁にほど近い奈良の中枢にあるホールで、私が学生時代に出演した頃からそのまま現存しているホールとなります。学生時代に乗ったホールで今も残っているって意外と少なくて、長岡京のホール(京コンは出来る前だったので、京都会館がほとんど)、シンフォニーホール、サントリーホール、大津市民会館、そしてこの奈良県立文化会館というところでしょうか。トシを取ったものです。ホールより長持ち(笑)。耐震補強、リニューアルに伴い音響も良くなったようで、今回少なめ(関係者限定)のお客様の入りにより却って豊かな響きが配信されたのではないかと思います。 コロナ・デルタ株の蔓延で開催自体(特に奈良女子大の学生以外が学内に入構できないため、指揮者、学外生、エキストラを含めた練習がいつもの学内講堂で出来ない)が危ぶまれましたが、学生さん達の必死の活動で何とか開催にこぎ着けました。さらには急速な収束の中で、当初の無観客開催から一部関係者のみではありますが有観客での開催も勝ち取ることが出来ました。学生さん達の粘り強い交渉には敬服すべきものがありますが、ここまで収まって、日常生活では普通に人との接触が回復している中にもかかわらず頑なに他大学生との入構すら禁じる大学の姿勢には、疑問を感じざるを得ません。 ホールにはOGや現役生の知人を中心とした200名弱のお客様、そしてYouTubeによる無料での配信が実施されました。リアルタイムというわけにはいきませんが、演奏日当日の夜7時からさっそくアップされました。 コロナ下ではそもそも学生さん達は学校自体に来られない日々が続いたことから、サークル活動などの新人勧誘も当然出来ず、オンラインや限られた時間を工面してのメンバー集めだったことは想像に難くありません。元々マンモス総合大学に比べると学部数(=学生数)の少ない女子大学なので、オーケストラに集まる団員もそれなりに減ってしまうのですが、そんな中でも低音弦楽器にはメンバーが多く集まってくれていました。チェロはエキストラが要らない程の人数。オケの存続のために頑張った上回生の苦労がしのばれます。 ちょっと団員の演奏楽器が偏ったせいか、Vn群が少なく、エキストラを入れても上から9-8-8-6-5人(ラインでの編成)。チェロバスの重い、重厚な編成となりました。弦楽器の並びはチェロが内側に入った近代配置(下手から1Vn-2Vn-Vc-Va,Vcの後ろにCb)。古典~前期ロマン派の前半2曲は、ティンパニが最上段下手で、横にTrp/Trb、ホルンが上手側Fgの横という最近では比較的珍しいHn上手ポジション。「ライン」でHnが4本に増えると、今度は下手側に入り、Flの隣に1,2番、Clの隣に3,4番というシートでした。これも最近は下手Hnはコントラバスと同じような平台もしくは3,4をさらに上げた雛壇で対応するので、やや珍しいかも知れません。奈良県文化会館のステージならもう1段積める様な気もしますが、橿原のステージ(奥行きが浅く幅が広い)と共用の並びとするなら仕方ないかも知れません。 今回はMax6人と言うことで、前列を団員の皆さん、後列をエキストラでの配置となりました。(指揮者の方からは、前列多いと圧が・・とコメントいただいちゃいましたが) 全員出演の魔笛、未完成は前4-後2、上回生のみ出演のラインでは前3-後2、という編成。今回後列は雛壇(6尺×6尺を2枚並べてくれたので、ゆとりを持って座れた)をいただけたので、指揮者、コンミスへの見通しもよく、また音もとなりのTさんのCマシンと合わせて箱鳴りを利用できたので、かなりいい感じに鳴らせたのではないかと思います。できれば今後はホルン共々雛壇を出してもらって、よりよいアンサンブルとサウンドになっていけばよいと思います。 前回ご一緒したとき唯一の2回生団員だったIさんが、もう4回生です。学生さんの2年という月日が如何に大きなものか。。しかし彼女の頑張りのおかげもあってか、2回生が2人、1回生が1人入団してくれていて、団員だけで4名というかつてない充実したメンバーで臨む50回記念演奏会となりました。とはいえ4回生は昨年一番練習できる時期を逃し、卒論の中での練習ですし、他パートでは昨年、本来なら50回定期を演奏出来たはずの回生が涙を飲んで卒業したはずですので、手放しで喜べないのが残念なところです。 メンバーはその4回生を筆頭に、2回生2人(入学してからオケステージ経験がないことになります)、うち1人は武庫川女子大に通う方で、普段の練習のために楽器を自宅に持ち帰っての奮闘と伺いました。そして1回生、ピアノで小さい頃にプロオケと共演したという俊英です。できればプロ奏者に指導について欲しいくらい。。素晴らしい素質を持つ学生さんばかりなのですが、ほとんどがまだ演奏会経験がないメンバーだっただけに、トップの2回生の苦労は大変だったと思います。そしてここで演奏できたことで、何とか4回生のノウハウがギリギリ引き継がれました。先日の京大オケでもそうですが、学生さんの2年は本当に大きい。大人の感覚の2年ではすまされないものがあります。 そんな中でエキストラは2名。他弦楽器とのバランス上若干多い?という気もしましたが、一番馬力が要りそう(かつ難しい)ラインで1回生が乗らない(総勢5名)となるのでこんなもんかな、というところです。おかげで前半6名が乗った演奏はパワフルでした。私ともう一方は、ここ数年常トラとして参加されているイケメンCマシーン楽器奏者Tさん。幸い数年前にご結婚もされているので、安心(何が?)です。 指揮は、これで奈良女大オケは9回目の木下麻由香先生。当初(昨年時点)の50回定期は別の方を予定されていたようですが、コロナにより公演日がずれたことでスケジュール調整他が難しくなったのかも知れません。結局はここ数年お世話になっている先生に記念演奏会を託すことが出来て良かったのではないかと思います。特に「ライン」の難度が高い中、全曲を一定のレベルに持っていくための助言、指導は大変であったと察すると同時に、さすがの手腕だったと思います。 奏者の方にもエキストラメンバーとして、OG、他大学学生、そして私のような一般トラがはいるわけですが、弦楽器の男性エキストラは前回同様4名だけ。Vn2名とコントラバス2名ということで、暫くはこのくらいの編成が続くのかも知れません。 魔笛-未完成というカップリングは何故か意外と多く、これで3回目となります(過去は大阪工大オケと京都プレザントさんでの公演)。比較的小編成の古典曲でありながら、トロンボーンが3本揃っている、というのが大きいのかも知れません。 というわけで選ばれる「魔笛」ですが、これがなかなか大変。そりゃモーツァルト晩年の傑作だから、というだけでなく、2ndVnからはじまるフゲッタ風の主部は弓のコントロールが難しく、初心者が多く乗る学生オケの1曲目としては、なかなか心臓に悪い(若いメンバーだから演奏は止まっても心臓が止まる心配はないでしょう)出だしとなります。また再現部直前は木管でのソロパッセージで音楽がつながっていくので、ここもドキドキポイントです。幸い弦はエキストラの力もあり、どちらも本番はうまく乗り切っていけました。 指揮者の演奏自体はモダン奏法ながら現代風のキリッとした表現を目指されていたようで、ティンパニにもややバロックティンパニの音色に寄せた音色を希望されていました。ただ、学生さんにはその辺のイメージが上手く伝わったかどうか・・直前でも割と響きの残ったロマン派調の音がしていたので、あれやこれやと提案する羽目になってしまいました。(その際にはかかりつけ医でお世話になっているティンパニスと、K先生のアドバイスをいっぱいいただきました。改めて感謝です)こちらがその時の動画です。 2曲目は「未完成」。つい先月弾いたばかりです。その時は、腕の達者な弦楽器奏者が18型で並び、コントラバスも10人、うち5弦が5本というもの凄い物量(木管は倍管)で圧倒的な未完成でしたが、今回は上記の編成による、ぐっと絞られたものになりました。譜面がBärenreiter版(しかし初期の版で、1楽章提示部最後の繰り返し前に誤植がある)でもあり、それに忠実に音下げすることにしました。未完成でのHipShotは、1楽章通してC下げ、2楽章は上げ固定でほぼ乗り切れるようです。 この曲、全体の表現がなかなかに難しい(そもそも転調が絶妙な曲なので、音程よくハモらないと曲の魅力が出ない)のですが、演奏上の難所としては特に1楽章では第2主題を受け持つチェロ、2楽章では中間部の長いソロを持つ木管群に負担がかかってきます。 今回のVcはほぼ学生さんのみ、ということで初心者から始めて1,2年という方が何人もステージに乗っていて、この曲をさらうのは大変だったんじゃないかと思います。右手の表現含め、誰か先輩としてアドバイスしてあげられるトレーナーさんとかがいたらなぁ、となかなかもどかしい感じでした。それでも本番にはちゃんと仕上げてくるのが学生オケ。若いって凄いなぁ、と思います。その若い時分にこういう名曲をしっかり覚えられるのは幸せですね。なので学生オケはほんと、繰り返しでも良いから名曲をしっかりやっていけばいいんじゃないか、と思うようになりました。こちらがその時の動画です。 そして3曲目は、シューマンの第3番、ライン。学生時代にアンサンブル・モーツァルティアーナさんに呼んでもらって(ヒヤヒヤで)弾いて以降は独身時代に三島で弾いたっきりで、久しぶりの演奏になりました。トロンボーンやホルンに異様なハイトーンが要求されていたりして以前はアマチュアには結構敬遠されていた曲のように思いますが、最近は管楽器のレベルが上昇して、その辺もクリアするようなったのでしょうか。特にコロナ下でステージの密を避けるため大きな曲がやりにくくなった大編成市民オケなどで、メンバーを絞り込んだ選曲の結果がシューマンあたりに落ち着く(これまたトロンボーンが入っているし)せいか、ここ数年あちこちで「ライン」が採り上げられているような気がします。たまたま前回の紫苑交響楽団さんも定期でラインを採り上げており、相変わらずの素晴らしい演奏を拝聴したばかりでした。 この曲、シューマンの他の交響曲と同じくオーケストレーションにやや無理があり、無茶苦茶に頑張りがいるところ、音符があってもほとんど弾いたらいけないところ、そもそも楽譜がややこしすぎて弾けないところ(苦笑)など、ある程度経験値がないと判断難しいポイントもなかなかに多く、大学から始めた低弦のトップあたりは頭を抱えているような感じでした。 なので、コントラバスの方は過去の事例を元にした楽譜を作ったり、チェロには上記紫苑さんのVcパートさんに協力いただいて楽譜を見せていただいたり、などのお手伝いをさせてもらいました。学生さん達、ほんとに頑張って、よくぞここまで、というくらいさらってくれてました。コントラバスのメンバーは、たまたま大阪で開催された高山先生の基礎講座を受講された方もおり、この半年で急激に進歩されたと思います。こんなにやる気いっぱいのみんながコロナで行動を制限されているのが、本当に悲しい限りです。とにかく今も、この後も出来る限りの応援をしたいと思っています。 それが学生時代、コントラバス弾き出して間もない私をエキストラに呼んでくれて、楽しくも充実した時代を過ごさせてくれ、そして今でも助けてくれたり、一緒に弾いたりできるメンバーを与えてくれた奈良女オケへの恩返しと思っています。 ちなみに音符が多くて忙しいこの曲、HipShotを使う場面は残念ながらほとんどなかったのですが、唯一4楽章(コラールの楽章)の最後だけはHipShotを使って譜面からオクターブ下のEsに下げさせてもらいました。ここはマーラー編曲版(何故かパート譜が手元にある)でも下げられているところなので、演奏効果の大きさでこっそり採用させてもらいました。全体としては指揮の木下先生のリードの下、溌剌とした演奏となったのではないかと思います。おじさんも一緒に躍動(した気分)を味合わせてもらい、感謝です。こちらがその時の演奏動画です。 アンコールはありませんでした。直接理由を伺ったわけではないですが、練習がままならない中、難曲である「ライン」始め各曲への対応で余裕がなかったこと、そしてオンライン配信のための予告、時間配分(業者の方にお願いしたようです)などから直前決定などの柔軟な対応が出来なかったのかも知れません。 演奏会は開催できたとは言え、打ち上げの方はまだまだ。。。何とかグループ単位での前夜祭や打ち上げをひっそりと、という感じのようです。となると車付きのコントラバス・エキストラ部隊は非常に不利。お食事だけでお付き合いしてもらうのも。。となってしまう(通常は宴会の席に登場して、ノンアルドリンクで頑張って参加します)。 今回は何とか「反省会」と称して別室の広い空間にて、引き継ぎや先生の講評などを受け、飲食は出来ませんが少し現役の皆さんともお話しすることが出来ました。 ついに節目の50回記念公演を歴史に刻むことが出来た奈良女オケ、次は来年5/21にスプリングコンサート。これは新入生へのアピールも兼ねているもので、ぜひ成功を・・その前にまずは普通にお客様が入って、そして練習も他大学生、エキストラを含めた練習が普通に構内で出来るようになることを祈るばかりです。過去の演奏経歴です。通算366ステージ目。■モーツァルト:歌劇「魔笛」序曲・1991/09 横浜シティ・フィルハーモニック/鎌田 由紀夫・1992/10 秦野市民交響楽団/川合 良一・1992/11 東京グリーン交響楽団/堀 俊輔・2017/11 大阪工業大学管弦楽団/国沢 晴香 Breitkopf版・2018/09 墨染交響楽団/大島 正嗣 Bärenreiter版・2020/01 京都プレザントオーケストラ/仙崎 和男 Breitkopf版■シューベルト:「未完成」(学生時代の演奏旅行を除く)・1991/12 桜美林オーケストラ/セルジョ ソッシ・1992/03 ニューシティー・オーケストラ/上野 正博・1994/12 エルムの鐘交響楽団/川越 守・1996/11 駿河フィルハーモニー交響楽団/関谷 弘志・1998/11 東京グリーン交響楽団/川本 貢司 ・2009/04 びわこフィルハーモニーオーケストラ/有馬 純昭 Bärenreiter版・2015/11 京都市民管弦楽団/長田 雅人・2017/11 大阪工業大学管弦楽団/国沢 晴香 Breitkopf版・2020/01 京都プレザントオーケストラ/仙崎 和男 Breitkopf版・2021/11 オーケストラ・モデルネ・京都/篠﨑 靖男■シューマン:交響曲第3番「ライン」・1984/10 アンサンブル・モーツァルティアーナ/岡田 司・1996/06 駿河フィルハーモニー交響楽団(現:三島フィル)/関谷 弘志 奈良女子大学管弦楽団さんとの演奏履歴(通算8ステージ目)です。 1983/11 第14回定期演奏会 奈良県文化会館(ベートーヴェン交響曲4番他) 1984/11 第15回定期演奏会 奈良県文化会館(シューベルト交響曲6番他) 1988/05 1988スプリングコンサート 奈良女子大学講堂(旧講堂)(スコットランド他) 1988/11 第19回定期演奏会 奈良県文化会館(ブラ2他) 2016/12 第46回定期演奏会 奈良県文化会館(ブラ1他) 2017/04 2017スプリングコンサート 橿原文化会館 (シューマン「春」他) 2019/12 第49回定期演奏会 橿原文化会館(エロイカ他)