カテゴリ:経済に関して
日経ビジネスより
米国で好調な宅配サービス「7NOW(セブンナウ)」のブランドを日本や世界に展開していくと決めたセブン&アイ・ホールディングス(前回の記事)。ネット通販全盛の時代、セブンは店舗を持つ強みとネットをどう融合していくのか。お膝元の日本で進む取り組みを追った 1月中旬、札幌市でも珍しい大雪が降りしきっていた日。住宅街にある「セブン-イレブン札幌澄川中央店」のレジ裏に置かれたスマートフォンからけたたましい音が鳴った。スマホを手に取って売り場に出た店員は、画面と陳列棚を見比べながら商品を選択。スマホのカメラ機能でバーコードを読み取ってから商品をカゴに入れていった。 音が鳴ってから十数分たつと、店前の駐車場には白い軽自動車のバンが到着した。悪天候をものともせずにやってきたドライバーは、店員が袋に入れた商品を受け取り、再びクルマに乗って走り出す。行き先はセブン-イレブンに商品を注文した個人宅だ。数分後、店員のスマホ画面で確認できる配達状況が「完了」の表示に変わった。 これはセブン-イレブン・ジャパンが「最短30分でお届け」を合言葉に北海道や広島県、東京都で試験的に提供する「ネットコンビニ」サービスの一コマだ。ネットから店舗の在庫を確認して注文できる。 リアル店舗とは異なる客層 「実店舗とネットコンビニの客層は大きく違う」。こう話すのはセブン-イレブン・ジャパンの藤田重人執行役員だ。実店舗は50代前後の男性が主な客層だが、ネットコンビニは30代前後の女性が中心。平均客単価は実店舗が720円ほどなのに対し、ネットコンビニはその3倍程度だ。購入品目も実店舗はおにぎりや弁当など調理済みの食品が主だが、ネットコンビニでは食材や消耗品などもよく売れる。 「実店舗の客層は徐々に高齢化が進んでいる。ネットコンビニはリアルで取り込めていない消費者を獲得できている」(藤田氏)。セブン-イレブンは2月中に対応店舗を主に都内の約1200カ所まで増やし、2025年度には全国の約2万店まで拡大させる計画だ。 近年、世界中で「超即配」競争が過熱している。米国では小売り大手のウォルマートやアマゾン・ドット・コムが食品などの即日配達を手掛けてきたが、配達時間は注文から1~2時間が限界だった。そんな中、30分で食品などを配達する「ゴーパフ」が脚光を集め、「15分」「10分」をうたうスタートアップも登場するなど時短合戦が激化する。 日本でもZホールディングスが22年1月、最短15分で食料品などを配達する事業を始めると発表した。傘下のアスクルが扱う商品を料理宅配大手、出前館の配送網を使って運ぶ。 「10分台」という潮流と比べれば、セブン-イレブンのネットコンビニの30分という配達時間は遅いようにも思える。ただ多くの超即配サービスが小型の倉庫のような配達拠点を一から整備するのに対し、既存の店舗から商品を運ぶ。初期投資を抑えつつ、商品力で差を付けられる。 ところ変わり、JR西日暮里駅から北に歩くこと5分。ここには日本で一番小さな「イトーヨーカドー」の店舗がある。総合スーパーを30坪ほどのコンビニ店舗のサイズに圧縮したようにも見えるが、さにあらず。この店舗はいわば“出島”。背後には延べ床面積で1000坪を超える「目に見えないスーパー」が広がっている。 一般の買い物客がいない総合スーパー 「ネットスーパー西日暮里店」(東京・荒川)。イトーヨーカ堂が展開するEC(電子商取引)に特化した「ダークストア」だ。屋内は総合スーパーの店舗そのもの。値札が付けられた日用雑貨や食料品が陳列棚にずらりと並び、取り扱う品目は約8500に上る。 ただ、店内には一般の買い物客がいない。制服を着た従業員が注文を受けた商品をピックアップし、梱包済みのものをベルトコンベヤーに乗せていく。その行き先は配送車。委託先の事業者が、店舗のある荒川区を中心に西は練馬区、南は目黒区まで東京23区中14区に配送する。 イトーヨーカ堂はこれまでも既存店でネットスーパー事業を行っていた。ただ通常の買い物客が交じると、商品の在庫数はめまぐるしく変動する。ECで注文を受けても実際には在庫がなく、商品をピックアップできない機会損失が発生していた。既存店を活用したECでは欠品率が10%ほどあったという。 この課題の解消に向け設けたのがダークストアだった。ネットスーパー西日暮里の欠品率は1%以下。さらに「出荷件数は既存店の約4倍」(イトーヨーカ堂お届け事業部の加納宏一総括マネジャー)に上る。 イトーヨーカ堂は23年春には横浜市で「ネットスーパー新横浜センター」を開設する予定だ。ネットスーパー西日暮里より広い、半径30km以内からの注文に対応する。他にも首都圏で大型ダークストアの建設を計画しており、スーパーにおけるラストワンマイルの足掛かりとしたい考えだ。 配送側だけでなく受け取り側の利便性を高める試みもある。都内某所の新築マンションの駐車場。ここにはイトーヨーカ堂が20年3月に試験的に設置した専用の宅配ロッカーがある。冷蔵機能付きで、配送した商品を戸別に保管できる。 このロッカーを設置して見えてきたのは、子育て世代の女性からのニーズが高いこと。保育園の前などに設置すれば多くの需要を取り込めるとイトーヨーカ堂は分析する。将来はこのロッカーを、コメや牛乳などを一定期間ごとに購入する定期便サービスの拡大につなげる狙いだ。 配達員の確保は激戦に 注文から30分で配達し「即食」ニーズに応えるネットコンビニと、まとめ買いで半日から1日の配送時間を取るネットスーパーの両面作戦を進めるセブン&アイHD。これまでの実績を見るとネット上での消費に対して高度に最適化すれば、拾えていなかった客層を取り込める可能性が浮かび上がる。 ただし、双方に共通する課題は配達員の確保だ。近年、ECの急速な拡大で宅配便の取扱個数は右肩上がりで増えている。コロナ禍による「巣ごもり消費」でその傾向に拍車がかかった。国土交通省によると20年度の取扱個数は前の年度に比べ12%増の約47.8億個に膨らんだ。 しかも、この数字にはEC事業者が自前の配達網で届けた荷物は含まれていない。アマゾンは日本で丸和運輸機関などの中堅物流事業者や個人事業主などとの提携で整えた自社物流網を使い、億単位の荷物を配達する。ラストワンマイルを担う人材の争奪戦は激しくなるばかりだ。 セブン&アイHDはネット注文のラストワンマイル業務を外部の配送事業者に委託する考え。セブン-イレブンの藤田執行役員は「配送会社との関係構築もしっかり進めている」と話すが、アマゾンなどEC事業者が配達の担い手を囲い込む中、全国をカバーする配送網を築くのは容易でない。 ただ、この壁さえ乗り越えれば消費の在り方を一変させる可能性も秘める。25年度までの対応を目指す2万店という数字は宅配最大手、ヤマト運輸の拠点数を優に超す。国内の人口の大半を配達圏としてカバーできるとみられる。さらに、コンビニとスーパーの両方を持つ強みも生かせる。配送事業者に加え、車両を差配するシステムや最短ルートの選出などのインフラまで共通化し、商品構成を融通すれば、サービスの優位性と実現可能性は高まるだろう。 追い求めたシナジーが形に ネットの弱点の一つが、実店舗で店内を見て回りながらふと目に付いた商品を手に取るような体験を提供しにくいこと。「将来的にはCRM(顧客情報管理)に行き着きたい」とセブン-イレブンの藤田執行役員は話す。 セブン-イレブンのネットコンビニでは会員組織「7iD(セブンアイディ)」への登録を促している。店頭で使用できるポイントサービス「セブンマイルプログラム」や電子マネー「nanaco」と連携すれば、消費者のネットでの注文内容と実店舗での購買情報を突き合わせられる。それによって、実店舗での購買傾向に合わせて顧客が好みそうな新商品をネット上でおすすめするといった販促が可能になるわけだ。 あとは、そうした体験を提供できるだけのデジタル対応力をセブン&アイHDが持っているかどうかだ。「セブンペイ」と同じ轍(てつ)を踏まない実行力が求められる。 消費者はネットとリアルを行ったり来たりしながら生活している。コロナ禍が続き、ネットの比重はさらに高まりつつある。もはやリアル店舗だけで競争を勝ち抜くのは難しいとセブン&アイHDも分かっている。だからこそリアルとネットの融合の在り方を愚直に模索してきた。 その先にあるのは、コンビニやスーパーの機能がネットに溶け出す世界だ。店舗の面積や立地はもはや制約ではない。コンビニとスーパーの境界があいまいになり、それぞれの客が業態の枠を超えて商品を購入していく。かつて「カリスマ」がネットを通じて追い求めた、異なる小売り業態間のシナジー。それが形となる未来がすぐそこにあるのかもしれない。 -----------------私の意見---------------------- スクラップ&ビルドさすがだね。同期なのであえて井坂と書くけど、やはりオムニの逆襲だね。是非とも成功して欲しい、コストコの要素もあるなと思った。恐らく原点はかつての三河屋の御用聞きなのだろう。各家庭の在庫を判断した上で、かつては御用聞きが各家庭を周り注文を取っていた、その戦略だろうと私は推察する。新たなビジネスモデルの構築だ。創業者である伊藤さんのお客様は来ないと思えからの発想だろう。またコンビニの生みの親である鈴木さんの教えを発展させ鈴木さんが失敗したと思うオムニのリベンジだろう。 スクラップ&ビルド、これは永遠のテーマだろうな、お客様から支持、信頼される企業だよね頑張れ!! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.02.08 07:17:14
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