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テーマ:本のある暮らし(3195)
カテゴリ:本
仲秋の名月。その月明かりにめげることもなく天頂にきらめく1等星2等星。畑が点在するうちの市は、まだ空が広い。
「I love you 」を「貴方を愛しています」と訳した生徒を、夏目金之助先生は「日本語にはそんな言い方は存在しない」と叱ったとか。月が綺麗ですねと言えば伝わる、というのは明治時代の男女交際の奥ゆかしさを伝えるエピソードとしても微笑ましい。それにしても漱石、親友の子規を軽く飛び越えるうたごころの持ち主である。 確かに日本人の語感としては今でも「愛している」は大げさすぎて、かえってわざと軽めに使うしかなかったりも。想いをこめて大事に「好きだ」とか「…大好き」と言ったほうが伝わるのかも。私も初々しかった頃は「満月だね」「うん、満月」なんて会話でじーんとしたりもしたものだ。 あの時代のこの言葉の翻訳でもう一つ印象的なものがある。二葉亭四迷の「死んでもいい」だ。彼が日本に紹介したツルゲーネフ、『片恋』と訳された小説で、普段は大胆なくらい溌剌とした17歳ヒロインのアーシャ(原題は彼女の名前)が、震えながらする告白。「わたし、死んでもいいわ」。 そうそう、天正時代には love は「御大切」と訳していました。いいな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011.09.13 08:38:52
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