いつまでも…二人で

令和4年4月5日午後8時半ごろ
担当の看護師さんが、夜の見回りに来られました




この日は、ホスピスに入院してちょうど一週間がたったので
朝から、血液検査とレントゲンを撮ることになりました

血液検査は・・・もう血管が注射針を押し返すので血液が取れないので検査はできないとのことでした

移動式のレントゲンは、病室のベッドまで来てくださったので何とか撮ることができましたが
1週間前に右肺に転移していた3個の癌は、右肺中に増えていて
それはまるで水玉模様のようになっていました

左肺は、もう水浸し状態で
『とても苦しいと思います』と担当医師から告げられました
稀な癌でスピードが速いと、覚悟はしていましたが
まさか1週間でこんなに悪くなるとは・・・

一番落胆されていたのは、主治医かもしれません


でも、本人はウトウトと眠ることはありましたが
目覚めている時はご機嫌がよく、私と目が合うと
柔らかい微笑みを浮かべてくれていました

私も、1秒たりとも無駄にしたくなかったので
夫の横から離れませんでした

日中は、そんな静かで穏やかな
今までの日常と何ら変わりのない、二人の時間が流れていたのです



いつもより早い、午後8時半ごろ
今日はもう眠りたいと言って、看護師さんにいつもの睡眠薬を入れてもらうことになったのです

『今日は、もう寝るの？』と聞く私に
「うん、今日は眠たい・・・」と言いました

そして、いつもと同じ私の『お休み』に
いつもと変わらない優しい微笑みで、頷いてくれました





そして・・・



夫の『おはよう』は、ありませんでした・・・


4月6日午前5時45分・・・
とぎれとぎれの息が、すーーーと終わり


なんて静かで、穏やかな眠ったままの


夜明けを待っての旅立ちでした・・・


窓の外は・・・桜の花がひらひらと散っていました・・

　　　




一番苦しく、思い出したくないけれど

一番覚えていたい二人の最後の　穏やかな夜の記憶


明日の朝は天気が悪そうなので
一年前のような朝焼けは見られないかもしれないけれど

同じ時間に、見送った空を眺めたいと思います







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