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▼刑務所での面会
富山刑務所で面会に来たことを告げる。すると応対に出た刑務官は面会申込書に氏名と続柄を書けという。氏名を書くのは簡単だが、問題は続柄だ。「なんて書こう」と一瞬と惑ったものの、「知人」と書いた。私は裁判所でその男性を傍聴席から見ているし、ある程度の素性も知っている。まあ、私から見れば「知人」のようなものだろうと強引にこじつけた。 刑務官はその申込書を持って、その男性に面会者が来ている旨を伝えるため、奥に入っていった。待たされる側としては気が気でない。その男性は面会に応じてくれるだろうか、「知人」などと書いたので、気を害したりしていないだろうか、などなどと考えていた。 しかし、それらは杞憂であった。その男性は間もなく私の前に現われた。一応Aさんとしておこう。20代の若者だ。よくテレビに出てくる刑務所の面会場と同じで、私たちの間に穴の開いた透明の衝立があり、その衝立を通して話をするようになっていた。 私は事情を説明した。私が新聞記者であること、Aさんの裁判を傍聴していたこと、できれば過激派の女性が逮捕されるきっかけがなんであったかをしりたいのだということを説明した。 事情を理解したAさんは、こちらの意図に理解を示しつつも、最初は過激派逮捕のきっかけについてはあまり話したがらなかった。しかし私の質問に対してAさんは、断片的にだが答えてくれた。 いきさつは大体こうである。Aさんは旅先の長野県の山中にある宿泊施設でその過激派の女性に出会った。女性はそこで働いていた。Aさんはその女性と親しくなり、そして恋をした。お互い自分の生い立ちを打ち明けるようになったとき、その女性は自分が過激派であることを明かしたのだ。二人はやがて別れ、富山まで流れてきたAさんはそこでちょっとした盗みを働く。警察に捕まり、取調官に事情を聴かれているときに口を滑らせて、その女性のことを話してしまう。 色めき立ったのは富山県警である。すぐに警視庁に連絡を取り、長野県の山中で女性を逮捕したのである。 Aさんはその後、富山地裁の判決で執行猶予付きの刑が確定した。判決後、富山刑務所を出所するAさんに再び会った。弁護士に連れられ、富山署で世話になった警察官に「これから心を入れ替えて真面目に働きます」と挨拶に行くのだという。 その後、Aさんがどこで何をしているのか、消息は知らない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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