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天の王朝

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白山菊理姫

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2006.08.01
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カテゴリ:メディア
バブルの夜明け
今から思うと、あれはバブル経済の幕開けを告げる象徴的な出来事だったのかもしれない。1980年代後半から始まったバブル景気は、不動産から株式市場、商品・穀物市場、果てはゴルフ会員権まで、それぞれの市場にカネをあふれさせた。世の中の至る所に余剰のカネがばらまかれ、欲に駆られた人々は狂喜乱舞した。それは大量なカネが宙を舞うような狂気の世界でもあった。

浦和支局赴任早々の1985年4月4日夕、埼玉県川口市木曽路の排水溝に新札の一万円札が浮かんでいるのを帰宅途中の女子中学生が見つけ、交番に届け出た。見つかった新札は14枚。最初は、何の変哲もない落し物として処理された。

ところがこの話を聞いた父親が二日後、半信半疑ながらも現場付近の排水溝を調べたところ、新たに83枚の一万円札を発見したことから大騒ぎとなった。

もっと見つかるかもしれない。川口市の排水溝は一躍、新たに見つかった金鉱のように有名になり、近所の人や遠方からの野次馬が続々と排水溝に群がり収拾が付かなくなった。騒ぎを沈静化させるためにも、埼玉県警川口署はショベルカーを使った大がかりなドブさらいに乗り出した。

こうして見つかったのは、全部で一万円札120数枚。これほど騒いでも落とし主はなかなか見つからない。同署は何らかの犯罪に絡むカネではないかとみて捜査を始めた。

一万円騒動の結末はあっけなかった。有力な落とし主が見つかったのだ。前年の12月26日に現場付近で住宅資金260万円を落とした人がいた。その人は、自分の車の上にお金を入れた紙袋を載せたまま車を発進させてしまったことを後になって気付いたという。

しかし問題は、排水溝の新札とその人が主張する住宅資金を結ぶ物的証拠がまったくないことだ。新札の番号を控えていたのなら証拠になっただろうが、もちろんそのようなことはしていなかった。社名が書いてあったという紙袋も見つからなかった。証拠がないかぎり、落とし主を特定することはできない。拾われたおカネは遺失物法により、半年後に拾い主のものとなった。おそらく見つかっていない残りのカネも、そのときまでには誰かの懐に入っていたのかもしれない。





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最終更新日  2006.08.01 12:06:59
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