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テーマ:不思議な世界(697)
カテゴリ:不思議な世界
▼タイムパラドックス2
タイムトラベルによって生じるパラドックスを解決するには、二つの考えがある。 一つはロシア人宇宙論者イーゴリ・ノヴィコフの説。過去に戻ってパラドックスを起こそうとしても、見えざる手(まだ発見されていない物理法則)が働き、邪魔をするのだという考えだ。たとえば、天井を歩こうとしても重力の法則があるので実行できないのと同様の絶対法則が、自由意志で過去を変えようとする人の行動に働くことになる。ただ、ノヴィコフ説には大きな弱点がある。 未知の法則の働きにより自由意志で過去を変えことができなくても、未来から持ち込まれた意志をもたない無生物が“悪さ”をするかもしれないからだ。たとえば、戦国時代にマシンガンを持ち込むだけで、その後の歴史は大きく変わるだろう。 過去に紛れ込んだ、ほんのわずかな異物があれば、歴史は激変するという説もある。それがカオス理論でよく引用される「バタフライ効果」だ。ブラジルでチョウチョウがはばたくだけで、それまでの力のバランスが崩れ、テキサスで竜巻が発生するという。つまり地球上の天候など、ある重要な性質が決まる前に少しでも性質(天候など)を決める要素がずれると、時間の経過とともにそのずれがドンドン広がってとんでもないことを引き起こすという考えだ。この説を採ると、非常に小さな無生物を過去に送り込むだけで予想できない変化が起きて、タイムパラドックスが生じてしまう。 ノヴィコフが主張するような、パラドックスを回避するような法則があるのならば、タイムトラベル自体が不可能であるという結論に達するのである。 そこでもう一つの解決策が浮上してくる。タイムトラベルで過去にさかのぼった時点で、川の流れが二つに分かれるように時間も滑らかに二手に分かれ、二つの宇宙が存在するようになるという考えだ。この仮説であれば、自分が生まれる前の過去にさかのぼって自分の親を殺しても、その宇宙では「自分」は確かに生まれないが、元々いた宇宙では親は何事もなかったかのように存在し続ける。過去に旅立てば旅立つだけ、別の宇宙が生まれるのだ。 これがパラレルワールド理論の真髄であり、多世界理論と呼ばれる有力な宇宙論である。この理論によると、可能性のあるすべての量子論的な世界が並行して存在するのだ。量子力学の多世界解釈と、宇宙論がここで合流する。宇宙はすべての可能性を実現することができる壮大な実験場なのであろうか。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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