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白山菊理姫

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2007.11.22
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テーマ:いい言葉(576)
カテゴリ:文学・芸術
史劇のバラ7(ヘンリー6世パート2

赤いバラ

今日は、『ヘンリー6世』第一部の台詞に出てくるバラをダイジェストでお届けします。

PLANTAGENET
And, by my soul, this pale and angry rose,
As cognizance of my blood-drinking hate,
Will I for ever and my faction wear,
Until it wither with me to my grave
Or flourish to the height of my degree.

プランタジネット
わが魂にかけて、この青白い怒りの白バラを、
血を飲み干すほどの憎悪の旗印として
ずっと、わが派のために身にまとうことにしよう。
我とともに墓に入ってしぼむか、
わが栄光の高みまで咲き誇るかのいずれかだ。

一行目のthis pale and angry roseは三行目のwearの目的語ですね。三行目のfor ever and my factionは「永遠にわが派のために」とforはmy fancitonにもかかっています。4行目のuntil以下まで白バラを身につけようと、赤バラを身につけるというサマセットに対抗してプランタジネットは宣言しています。

次はプランタジネット派のウォリックの台詞の一節です。

WARWICK
Meantime, in signal of my love to thee,
Against proud Somerset and William Pole,
Will I upon thy party wear this rose:
And here I prophesy: this brawl to-day,
Grown to this faction in the Temple-garden,
Shall send between the red rose and the white
A thousand souls to death and deadly night.

ウォリック
一方、あなたに対する私の敬愛の証として、高慢なサマセットとウィリアム・ポールに対抗して、この白バラをつけてあなたに加勢しましょう。
そして私はこう予言します。今日この寺院の庭で発生した党派の争いは、赤バラと白バラの戦いとなって、幾千人もの魂を死と暗黒の世界へと送ることになるだろう、と。

英語の解説は特に必要ないですね。何千人も死ぬことになると宣言するとは、勇ましいを通り越して、あきれ果ててしまいます。一度熱すると引き戻せなくなる人間の性を見るようで悲しくもなります。

次にやっとイングランド王ヘンリー6世が登場します。今までどこへ行っていたのかと思うほど、王のいないところで重要な話が進んでいきます。それもそのはずです。幼くして王位に就いた若すぎるヘンリー6世には、事態の深刻さを理解することができないし、また事態を収拾する能力もほとんどないんですね。家臣に言われるままになっています。そして時々、言うことを聞かない家臣に対して困惑と狼狽の醜態を晒します。王はただただ、争いごとがなくなってくれればいいと祈ることしかできません。

そのような王の台詞です。

King
I see no reason, if I wear this rose,
Putting on a red rose
That any one should therefore be suspicious
I more incline to Somerset than York:
Both are my kinsmen, and I love them both:


それゆえに余がこのバラを付けても
(そう言いながら赤いバラを付ける)
だれも私がヨークよりもサマセットを贔屓しているなどとは疑うまい。
どちらも余の親戚であり、余はどちらも愛しておるからな。

これも英語の解説は必要ありませんね。王は赤いバラを付けてしまいました。それがどれだけの意味があるとも知らずに。王が事態の深刻さを理解していないことを示す、非常に象徴的な動作であり、台詞です。現状認識が甘いとしか言えませんね。これで赤と白に完全に分かれました。運命を暗示する心憎い演出です。

『ヘンリー6世』三部作では、とにかくたくさんの登場人物が死んでいきます。しかもかなり残酷に殺されるんですね。第一部で処刑されるジャンヌ・ダルクもその一人です。

第一部はヘンリー5世の葬式(1422年)の場面から始まります。時はまだフランスとの百年戦争(1337-1452年)の最中。ヘンリー5世の死後もしばらくはイギリス軍が優勢でしたが、フランスにジャンヌ・ダルクが登場すると、形勢は逆転します。まさにフランスにとっては救世主ですが、イギリスにとっては悪夢です。イギリス人はジャンヌ・ダルクを悪く言う傾向がありますね。シェイクスピアも、ジャンヌ・ダルクを悪魔に心を売ってイギリス軍に勝利した魔女のように描きます。

劇では、妊娠しているので子供だけは助けてほしいと懇願するジャンヌ・ダルクを、ヨーク公は罵りながら火刑に処します。事実かどうかはさておき、妊娠は聖女(処女)ではなかったことを強調する脚色ですね。

ジャンヌ・ダルクと同じようにイギリス軍に捕らえられたフランス・レーニエ(ロレーヌ)公の娘マーガレットはヘンリー6世の后になるのですから、対照的な運命が描かれています。第一部はそのマーガレットとヘンリー6世の婚約(1444年)までを描いて終わります。22年間分の歴史を駆け足で通り過ぎたような、目まぐるしい展開です。

第二部に出てくるバラは明日のブログで紹介します。





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最終更新日  2007.11.22 12:05:35
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