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天の王朝

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白山菊理姫

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2008.04.08
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テーマ:いい言葉(576)
カテゴリ:文学・芸術
▼悪の華と薔薇17(秋の歌)
昨日は「秋のソネット」を紹介しました。「秋」と来れば、おそらくボードレールの詩の中で最も有名な詩「秋の歌」を取り上げないわけにはいきません。『悪の華』の中で私の最も好きな詩編で、実は以前、このブログでも最初の部分(私が暗記していた部分)を取り上げたことがあります。

では、鬼気迫るような傑作「秋の歌」をお読みください。

Chant d'Automne(秋の歌)

I
Bientôt nous plongerons dans les froides ténèbres;
Adieu, vive clarté de nos étés trop courts!
J'entends déjà tomber avec des chocs funèbres
Le bois retentissant sur le pavé des cours.

やがて私たちは冷たい闇の底へと沈んでいく。
さようなら、まばゆい光よ、私たちの夏はあまりにも短すぎた!
私にはもう聞こえてきている、陰惨な衝撃とともに
中庭の敷石に薪が落ちて鳴り響くのを。

Tout l'hiver va rentrer dans mon être: colère,
Haine, frissons, horreur, labeur dur et forcé,
Et, comme le soleil dans son enfer polaire,
Mon coeur ne sera plus qu'un bloc rouge et glacé.

冬のすべてが私の中に戻って来ようとしている。
怒り、憎しみ、わななき、恐怖、強いられた辛い労働、
そして、極北の地獄に閉じ込められた太陽のように
私の心は赤く、凍った塊に過ぎなくなるだろう。

J'écoute en frémissant chaque bûche qui tombe
L'échafaud qu'on bâtit n'a pas d'écho plus sourd.
Mon esprit est pareil à la tour qui succombe
Sous les coups du bélier infatigable et lourd.

薪が落ちる音の一つ一つを私は震えながら聞き入る。
死刑台を建てる音でさえ、これほど重々しく響くことはあるまい。
私の精神は崩れ落ちる塔のようだ。
城壁を破壊する大槌で、ひっきりなしに重い一撃を加えられている。

II me semble, bercé par ce choc monotone,
Qu'on cloue en grande hâte un cercueil quelque part.
Pour qui? - C'était hier l'été; voici l'automne!
Ce bruit mystérieux sonne comme un départ.

その単調な衝撃に揺すぶられていると、どこかで誰かが
大急ぎで棺に釘を打ち付けているように思われてくる。
誰のために? 昨日は夏だったのに、今は秋だ!
その不思議な物音は別れを告げるように鳴りわたる。


ここまでが「秋の歌」のパート1です。なぜこの詩が有名なのかと言うと、アンドレ・ジッドの『狭き門』の中で、主人公たちがこの詩の冒頭部分を暗唱する場面が出てくるからなんですね。神への愛を貫こうとするアリサが命を落とさなければならなかった理由は、この詩の中に隠されているんでしょうか。アリサとボードレールは対極の存在であるだけに面白いですね。

さて、私にとってジッドは、思い出深いフランス人作家でもあります。英国ケント大学留学中、私は母国語ではない英語でフランス文学を学ぶという「二重苦」を味わっていました。当然クラスメートも、英語でさえ大変なのに、フランス語もやるなんて無謀だ、という目で私を見ます。

学期間中、各学生は決められたフランス文学の作品の中から一つ選び、みなの前でその作品の分析を発表する宿題があるのですが、私はアンドレ・ジッドの『法王庁の抜け穴』を選んだんですね。一度も読んだことがない作品で、当然フランス語で読まなければなりません。しかもレポートも書かなければならないわけです。与えられた時間は三日だけ。

そのとき初めて知ったのですが、ジッドのフランス語って、すごくわかりやすいんですね。私はあっという間に『法王庁の抜け穴』を読みきり、そしてあっという間にレポートを書き上げ、その内容をクラスで発表しました。それが大成功だったんですね。今まで「こいつ大丈夫かよ」と懐疑的な目で見ていたクラスメートも、「こいつなかなかやるじゃん」という評価に変わりました。

私の英語に初めてミューズが宿った瞬間でもありました。

ずいぶん脱線してしまいましたが、明日は「秋の歌」の後半(パート2)を紹介します。


さようなら、まばゆい光よ!
沈み行く陽
(続く)





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最終更新日  2008.04.08 11:52:07
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