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テーマ:歴史なんでも(780)
カテゴリ:自然
現代の科学においては、ケプラーが見つけようとした天球の音楽、もしくは天界の音楽の法則はたわいのない妄想の類として片づけられてしまっているように思われます。そりゃそうですよね。惑星のそれぞれが音を出し、太陽系全体、あるいは銀河全体でハーモニーを奏でているなどという発想は馬鹿げているように聞こえます。
実際、ケプラー以降、科学の世界では天球の音楽を極めようという動きはほとんどなくなります。そもそも一般人の耳には惑星の音は聞こえてきませんから、仕方ないと言えば仕方ないですね。でも、「心の耳」で聞く人たちは、その後も文学の世界にはおりました。 シェイクスピアの例は既に紹介しましたが、同じく英国の詩人ジョン・ミルトン(1608~1674年)は『失楽園』で星々が歌を歌うモチーフを使っていますし、「天界の調べ」は「粗野で汚れた耳の人間には全く聞こえない」という見解を紹介しています。 ドイツの文豪ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749~1832年)の『ファウスト』の「天上の序曲」の冒頭でも、大天使ラファエルが「太陽は昔ながらの節で、兄弟たちの星の群と歌い競う」と歌ったりしています。英国の代表的なロマン派詩人ウィリアム・ワーズワース(1770~1850年)も、「はるか彼方の天球からのハーモニー」という表現を使っています。 しかし、本当に文学の世界だけの話にしてしまっていいのでしょうか。 私にはまだ解明されていないだけのように思えるんですね。 それは素数の研究と同じです。 拙著『楽しめば楽しむほどお金は引き寄せられる』(コスモ21刊)の57ページのコラム「数字に秘められた力ーー素数の神秘」でも紹介しましたが、素数が自然数の中でどのような間隔で現れるか、その法則性を解明しようと数学界や物理学界が血眼になっているんですね。 素数の出現にいったいどのような法則性があるのか、ないのか。実はいまだに解明されていない謎のままなんです。 最初に素数の出現に潜むパターンを見出したのは、「オイラーの公式」で知られるスイス人数学者レオンハルト・オイラー(1707~1783年)です。オイラーは、自然数の2乗の逆数の和を無限に足し合わせたら、その数は円周率πの2乗を6で割った数になることを発見したうえで、自然数に関する和が素数に関する積で表現できること、同時にそれは円周率πとも関連があることを突き止めました。 次に、数多くの法則を発見したドイツ人数学者カール・フリードリッヒ・ガウスが、自然数の中に素数がどのくらいの「割合」で含まれているかを調べて、その分布には一定の法則があることを明らかにしました。また「リーマン予想」などで知られるドイツ人数学者ベルンハルト・リーマン(1826~1866年)は、素数の分布を数式の形で表現する「素数公式」を見つけ出しました。 さらに最近の研究では、「カシミール効果」と呼ばれる素粒子の世界の現象や、原子核のエネルギー間隔を表わす式が、素数の個数の分布を示すとみられる数式と一致することもわかって来たんですね。まさにここまで来ると、神々の領域です。 で、惑星と音楽の関係に目を転じると、音楽の和音や倍音に「共鳴」が起きるように、天体力学においても、公転運動を行う二つ以上の天体が互いに規則的・周期的に重力を及ぼし合う結果、両者の公転周期が簡単な整数比になる現象「軌道共鳴」が起きることが知られているんですね。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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