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テーマ:旅のあれこれ(10123)
カテゴリ:歴史散歩
ケント大学の授業で取り上げたジャン・ジュネの作品がこちらです。
![]() 1958年に書かれた『黒んぼたち(Les Nègres)』です。 「ニグロ」とは、意図的に蔑称を使っていますね。 通常なら「Les Noires」を使います。 英語のタイトルは『The Blacks』です。 4ポンド50ペンスと記されていますから、2250円くらいでしょうか。 写真がふんだんに(30枚くらい)使われた本でしたから、ちょっと高めでした。 ![]() 中表紙に英語でいろいろ私が書き込みをしておりました。 結構、解釈に苦労している様子が偲ばれます。 さて、この本を書いたジュネは、実は泥棒でした。 そのことは彼が書いた自伝的長編小説『泥棒日記』に詳しいです。 泥棒から作家に転じた、波乱万丈の人生を送っているんですね。 アヌイとは好対照で、生い立ちからして悲惨です。 ジュネは、1910年12月19日、娼婦であった母のもとパリ6区で生まれました。 モンパルナスの辺りですね。 母親は最初の7か月間育てた後、彼を保護施設に捨てます。 7歳で中仏モルヴァン地方の農家(世帯主は大工だったらしい)に預けられ、養子として育てられます。 彼は学校の成績は良かったようなのですが、すぐに些細な窃盗や家出を繰り返すようになります。 里親の母親が亡くなると、ジュネは次に老夫婦の里子となります。 しかし、再び窃盗や浮浪などの問題を起こし、15歳のときに教護院(少年院)に送られ、二年半の間拘留されます。 18歳になると、半ば勝手に外国人部隊に志願して入隊。 ほどなく同性愛行為などわいせつ行為で不名誉除隊させられ、やむなくスペイン、ポーランド、チェコ、ドイツなどヨーロッパ各地を放浪します。 放浪期間中は、物乞い、窃盗、同性愛の売春などに染まっていったといいます。 1937年にパリに戻ると、ジュネはそこでも窃盗やわいせつ行為などの犯罪を繰り返し、刑務所の常連になります。 しかしながら面白いもので、彼はこの刑務所で物書きの才能に目覚め、その才能を開花させるんですね。 親もなく社会からも見放された人間が必死に手繰り寄せた運命が、「3の火(離)」という自分の魂が求める表現者たる作家であったわけです。 ジュネは、実は環境がもたらす運命としても、「3の火」を持っています。 まさにその易占い通りに、追放、放浪、犯罪、刑務所という環境がジュネという作家を生み出したことになります。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.03.04 15:40:28
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