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テーマ:不思議な世界(697)
カテゴリ:文学・芸術
『ゴドーを待ちながら』で最初に誰もが気づく宇宙の三大法則の一つが、繰り返しですね。
登場人物たちは、毎日毎日、一向に現れない「ゴドー」を待ち続けます。 我々の日常も同じですね。同じことを繰り返します。 希望を持ったり諦めたり。 まったく不毛な、同じような一日を送っているように思われます。 しかしながら、一日一日同じようでありながらちょっと異なるのも日常です。 同じ一日でも昨日と今日、今日と明日では、ちょっと違います。 全く同じ繰り返しではないわけです。 対称的でいて、ちょっと対称的でない。これが第二の法則。 同様に第一幕と第二幕も同じようでいて違うようにできています。 木の葉が出てきました。 その一方で、ポゾは視力を失い、ラッキーも声を失っています。 そうして三番目の働きが同質結集の法則です。 つまりヴラディミールもエストラゴンも、どういうわけか、一本の木のそばに集まってきます。 ポゾとラッキーも同様ですね。 何か惹かれ合うモノ、同質のモノを見出すので、彼らもまた常に集まり続けるのです。 あらゆる人間の営みは、この法則から外れることはありません。 上演時間がわずか30秒ほどのベケットの戯曲『息(Breath)』ですら、この三大法則でできています。 『息』は、1969年に書かれた、登場人物が誰もいない寸劇です。 舞台上には、ゴミがあちこちに散乱しています。 そこに産声のような叫び声がした後、呼吸音だけが聞こえてきます。 呼吸は光の強弱とシンクロしています。 そして、二度目の叫び声が聞こえて、幕となります。 呼吸は繰り返し、しかもその呼吸は一回ごとに微妙に異なります。非対称性があるわけですね。 そして、舞台上の光や呼吸音に集まる観客の意識は同質結集の法則を表わしています。 ベケットは、これが宇宙の根本原則であることに気づいていたわけです。 宇宙には根源的な法則があることを感じ取っていたに違いないんですね。 それを極力、シンボリックに、あるいは記号的に描いたのが『息』だったように感じます。 『ゴドーを待ちながら』には、他にもオカルト的な現象の法則が多く描かれています。 待っているうちは来ないゴドーは、願っているうちは何も成就しないというオカルトの秘儀すら語られているように思われます。 ベケットの描くすべては、こうした宇宙に秘められた法則を明らかにすることだったのではないでしょうか。 では登場人物を詳しくみてゆきましょう。 (続く) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.03.23 10:34:15
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