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テーマ:お勧めの本(7394)
カテゴリ:ファンタジックなSF
最近のSFはむずかしくてとても読めない私ですが、この本はトールキンの『ホビットの冒険』のスペースオペラ版だというので買ってみたら、あまりに面白くて夜更かししてしまいました。
単なるパロディではなく、本歌取りの名句のように、『ホビット』の要所と魅力を踏まえつつ、まったく別の味を出しているのが、すごく小気味よいです。しかも、ルイス・キャロルの『スナーク狩り』をも本歌取りしている!(『スナーク狩り』未読なので、今度読んでみたいと思いました) 主人公のベイリー・ベルドンは、『ホビット』のビルボ・バギンズとほぼ同じ雰囲気や性格を持っているけど、他の登場人物たちは、「力の指輪」が「メビウスの環」になっているがごとく、ギュワッと一回ひねってあって、その発想の転換にびっくり。 たとえば「ドワーフたち」に当たるファール一族は全員、最初の一人マイラ・ファールという女性のクローンなのです。そういえば、『ホビット』のドワーフたちの主な一族は、デュリンの一族(不死で生まれ変わるデュリンを父祖とする)と言いましたっけ。 しかし、ファール一族のクローンたちの、一人一人の似て非なる性格、一族への忠誠、宇宙旅行をしては拠点ファール・ステーションへ戻るその帰属性、などを読んでいると、この女性ばかりの社会は、男性的なドワーフ社会の単なる裏返しとはまったく違う、独特の雰囲気をかもしだしていると感じました。 居心地のいいような悪いような、発展的(好戦的?)女性社会。何かに似ているなあ、としばらく考えたら、そう、まるで大きなハチの巣にそっくり! 女王バチがいて、その子どもである働きバチ(卵は産まないけれど全部メス)が営々と巣を築き、野山をとびまわっては集めた糧を持ち帰って繁栄している、ミツバチやスズメバチなどの大きな巣。 ほかにも、独創的な味を出している「’パタフィジックス」の哲学者ジャイロや、亜空間の声「図書館の司書」など、不思議な魅力を持つ登場人物がいっぱいで、サイボーグのなれの果てゴトリ(=ゴクリ。なるほど!)なんぞは、かすんでしまうほど。 そして、これもラストが私好みの円環なんですね。このスペースオペラでは、時間がぐるっと回ってもとへ戻るような筋書きになっていて、果てしない宇宙の探索を描きながら、物語世界は閉じた時空なのです。ほんとに不思議な、メビウスの環をぐるっと「ゆきて帰りし」物語! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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