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HANNAのファンタジー気分

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August 1, 2005
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テーマ:本日の1冊(3697)
 まず登場人物の名まえが、この物語のおもしろさを8割がた決めていると私は思います。
 主人公の少年の名前は“トンカチ”。石頭な人を馬鹿にする言葉でもあるので、どうもさえない感じ。
 彼の愛犬がまたすごい名で、“サヨナラ”。水たまりジャボチンスキー(この名まえも忘れられない)の姓名判断によると、すべてのものと別れゆく運命にある名まえだとか。なるほど。

 物語の展開は、『不思議の国のアリス』を思わせるファンタジーの王道です。
 草野球をする友だちをしりめに、「ホームランのへい」を越えて花を捜しにゆくと、サヨナラが白くて丸いもの(花の妖精ウイラー)を追いかけて走り出し、トンカチは、白ウサギを追うアリスさながらに、白い愛犬を追って別世界へ入りこみます。

 もとはへいの向こうは古い屋敷跡の廃墟でした。“屋敷跡”は作者(の一人。この物語は夫婦合作です)舟崎克彦の好きな原風景で、『ぽっぺん先生の日曜日』にも出てきます。
 しかしトンカチが迷いこむ所は森のようで、そこをぬけるとぱっと一面の花畑が広がっている。いわゆる心の深層にある“秘密の花園”なのでしょうね。くしゃみを止める花を求めて、“将軍”が、あらゆる花を集めてしまったのです。

 世界から花を盗んだともいえるこの“花将軍”はしかし、勲章がわりに花を胸に飾り、自分のくしゃみと戦う、人の好い人物です。彼と、仲間の動物たちのドタバタな日常は、ふつう冒険物語に出てくるような、団結した(または、団結しようと努力する)仲間たちとは、正反対です。
 彼らはどうも、もやもやぐずぐずしたトンカチの心のいろいろな思いの顕現のようで、一人一人勝手気ままに自分のやろうと思うことをやり、助け合うでもないしケンカをするでもない。仲がよいらしいけれど、別に友情というほどのこともない。いつも何かを捜して大騒ぎしている。

 そんな連中のもとでトンカチはあきれたり振り回されたりするけれど、彼の心がサヨナラを探し出して取り返そうという決意に固まるや、勝手気ままな仲間たちは突然、一致団結、トンカチに加勢してくれるのでした。
 そして、暗いぶきみな“モシモシの森”のワシミミズクからサヨナラを奪還して、一気に現実界に帰ってくると、身の回りに花ももどっている。結末はこれまた典型的で、ちょっとひねり足りない気もしますが、“花”はたぶん、愛とか希望とかの象徴で、それがトンカチの心の旅によって、深層心界から表へ現れ出てきたのでしょう…などと、…よけいな解釈かもしれません。





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Last updated  August 1, 2005 09:56:41 PM
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