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カテゴリ:これぞ名作!
マルシャーク作、「十二月物語」という題でも知られています。ロシアの民話をもとにしていて、本文は脚本形式。もちろんお芝居としても有名。
意地悪な母娘の言いつけで、大晦日の晩、雪の森にマツユキ草を捜しに行った継(まま)娘は、十二月の精霊たちがつどう焚き火を見つけ、彼らに助けてもらいます。 トールキンの『指輪物語』マニアである私が、特に興味をおぼえるのは、このお話にも美しい指輪が出てくることです。 「四月」にもらった指輪を、継娘は心から大切に思いますが、姉に奪われ、さらに物知らずな若い女王に奪われます。 マツユキ草を見つけた秘密を言わないと指輪を氷の穴へ投げ捨てる、と脅かされた継娘は、「投げてください!」と叫び、あらかじめ教えてもらっていた通りの呪文を唱えます。 ころがれ、ころがれ、指輪よ 春の玄関口へ 夏の軒ばへ 秋のたかどのへ 冬のじゅうたんのうえを 新しい年の焚火をさして! ――『森は生きている』(1955年版、湯浅芳子訳) すると十二月がいっぺんに出現して、継娘を再び助けるのです。 印象的なのは、教えられていたにせよ、「四月」にもらった記念の大切な指輪を、継娘が惜しまず手放そうとするところです。 ご存じのようにトールキンの『指輪物語』は、容易に手放せなくなる指輪がモチーフです。この指輪は、歳月に作用して持ち主を不老不死にさせる力を持っています。 『森は生きている』の指輪も、十二月をいっぺんに全部呼び出すところや、春夏秋冬をころがれとうたう呪文から、歳月を作用する魔力を持っていると考えられます。 指輪の円は、めぐる季節(時間)のシンボルなのです。 指輪を自分だけのものにしておこうというのは、時間の流れに逆らうことであり、自然摂理に反します。ですから、指輪の力を手にすることがあったとしても、必ずそれを手放すことができなければならない。 継娘は、指輪を大事にし、また正しく指輪を手放したので、最後には指輪は戻ってきます。そして、 こんどは、もうおまえがわしらのとこへくるんではなく、わしらがおまえのところによばれにいくよ。 ――「一月」のせりふ(『森は生きている』) 継娘は、めぐる季節をきちんと理解しその恩恵を受け取ることのできる人となったのです。 こういう人をこそ、私は(むかし書いた卒論の中で)真の「ロード・オブ・ザ・リング」(指輪の王)と呼びたいと思います。 それはともかく、新しい年と古い年が入れかわる今夜、どこかで十二月がつどって「燃えろ、燃えろ、あかるく燃えろ」と焚き火を燃やしている、というのは、すてきにファンタジックなイメージです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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