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カテゴリ:これぞ名作!
英語の朗読CDつきの“The Tale of Peter Rabbit”を買いました。語学学習用で、語句の解説なんかもついています。
私はもともと日本語の朗読CD(右画像)を持っていて、子供と一緒に覚えてしまうぐらい何度も聞いたので、今度は原語で聞いてみよう、と思ったのです。 ところで、ビアトリクス・ポターの絵は、とてもリアルな動物たちが、とてもリアルな人間の服を着ています。これがちっとも違和感のないのが、むかしから私には不思議でした。 『ピーター・ラビットのおはなし』も、うさぎの服装に注目してよく見ていくと、いろいろ面白いところがあると思います。 まず最初の絵では、もみの木の根方にいる母うさぎと4匹の子うさぎが、服なし、四つ足の、野生の姿で描かれています。 ところが、母うさぎがお出かけ前に子うさぎたちに注意する場面では、みんな服を着ています。母うさぎはワンピースにエプロン(このあとでは別のお出かけ着になります)。女の子うさぎたちは赤いマント。そしてピーターは青い上着です。この場面はみんな後足で直立していて、とても人間的。 さらによく見ると、女の子うさぎははだしなのに、ピーターだけが靴をはいています。服だってピーターのはしんちゅうのボタン(「金ボタン」と訳されていますが、原語ではbrass buttons)つきの上着で、何だか一番上等そう。 (ちなみに、A・アトリーの『チム・ラビットのぼうけん』でも、チムの上着には「しんちゅうのボタン」がついていて、確かつかまりそうになった時、そのボタンを犠牲にして逃げのびます) さて女の子うさぎたちは、クロイチゴをつむとき、すでに赤いマントをぬいでいるのに、ピーターはマグレガーさんの庭で色々食べ、見つかって追われて網にからまるまで、ずっと上着を着ています。 この上着を着ている間、ピーターの仕草は人間的です。直立歩行し、ニンジンを手に持って食べ、手でおなかをさすり、逃げる時も両手を前に突き出して二本足。 ところが、ポターはある時点でピーターを四つ足歩行にはっきりと変えます。 くつがなくなったのでピーターは、四つの足でかけだしました。そうするとこのほうがはやくかけられました。――『ピーター・ラビットのおはなし』いしいももこ訳 絵を見ても、このあと上着をも脱ぎ捨てたピーターは、すっかり野生の姿(四つ足)になり、立ち止まった時にもきっちり直立せずに、前足を揃えて少しだけ持ち上げた、うさぎらしいスタイルです。開かない戸口で涙をこぼす時だけちょっと人間ぽいですが、そのあと木戸をくぐり出る時も、入ってきた時(いかにも両手をついて四つんばいでくぐった)とはちがって、完全なけものの姿勢です。 この野生の姿は、巣穴にたどりついて倒れている絵まで続きます。母うさぎは人間らしいかっこうで料理をしているのに、同じ画面のピーターは、体をのばして横寝しており、これは(私はむかし学校の飼育小屋に入り浸っていたのでよく見たものですが)安全な場所で地面にでれっとのびて休息している、いかにもうさぎらしい姿です。 このように、服を着た人間らしいうさぎと、観察眼ゆたかな作者が写実的にとらえた動物としてのうさぎが、自然な感じでミックスしているのです。それも適当に描いているのではなくて、本文にもあるように、ここからは四本足、というふうに意識して描いてあるように思われます。 どんな時に人間ぽくなり、どんな時にうさぎになるか…、他のお話でもそんな点に注目してみるのも、おもしろいかもしれません(残念ながら私はシリーズの他のお話は手元に本がないので今ちょっとわかりませんが)。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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