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HANNAのファンタジー気分

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December 20, 2006
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テーマ:本日の1冊(3697)
 『精霊の守り人』(上橋菜穂子)が来年、アニメ放映(詳細はこちら)されると知って、このシリーズを再読しています。
 以前、『精霊の守り人』『夢の守り人』の感想は書きましたが、今日は、『精霊』でまだ子供だったチャグム皇子が、一人前の若者に育ったお話、『虚空の旅人』をご紹介。

 古代日本的な世界と、ゆらゆらと微妙であいまいで幽玄の異界(水界)とのかかわりを主に描いた『精霊』『夢』。少し中央アジア遊牧民的?な世界と、山の根のトンネルという常闇の世界とが印象的だった『闇の守り人』。それらとはかなり趣を異にしたこの第4作めは、開放的で明るい南海が舞台。
 そこは、新ヨゴ皇国の南西にある、島々をかかえた海洋国家サンガル王国です。海賊上がりの商人たちを祖先に持つ王家は、現実的でたくましく、チャグムが奥まった場所で神聖不可侵な皇太子となっている新ヨゴ皇国とは、対照的です。
 特に、チャグムと同年の第2王子タルサンは、漁民と一緒に島で育った健康的な熱血漢で、チャグムもこのようにありたかったのかも?と思わせるほど。
 王位継承の儀式を前に、このタルサン王子が呪術をかけられて兄王子を殺そうとしますが、裏には、勢力を争う島々や海の向こうの南の大国の影がちらつき、たいへん現実的な権謀術数がはりめぐらされていて、居合わせたチャグムたちを巻き込んでの陰謀合戦の面白さは圧巻です。

 しかし、ここにも、南国風に装いを変えた“異界(水界)”が存在しています。人間たちの欲得の渦巻く現実界の物語を要所要所でつらぬくように、不思議な実感(それはチャグムが時折り強烈に感じる「水の匂い」のように、読者の感覚をも不意にとらえるようです)を持って押しよせてくる、海の底の異界・・・

 その不思議さにとまどうサンガル人たち、その不思議さにとりつかれてしまった島の少女、その不思議さに共鳴しつつ取りこまれずにしなやかに生きる海上の民ラッシャロー。
 上橋菜穂子のすばらしさは、それぞれ違う価値観を持つ人々のそれぞれの立場と考え方が、えこひいきなくきっちり書かれているところで、さすが文化人類学者さん!と感心します。
 この物語でも、悪役呪術師でさえ、きちんと彼なりのスジが通っているのです。
 そして、現実の陰謀・外交問題にも、異界の匂いにも、うまく向き合ってゆくチャグムのなんと優秀なこと。ちょっとできすぎかも?と思うけれど、そこはやっぱり俗人ならぬ皇子さま。カッコよすぎ!です。

 で、来年春からのTV放映ですが、NHK-BS2なんですって。ああなんと。うちのTVはBSが入らない~ どうしよう~





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Last updated  December 20, 2006 10:39:52 PM
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