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カテゴリ:近ごろのファンタジー
守り人シリーズ完結編、ようやく図書館で借りられました。
ついに戦争が始まろうというとき、援軍を率いて故国へ向かうチャグム皇太子、“草兵”として前線に送られたタンダ、など気がかりがいっぱいなまま終わった第2部でしたが、この第3部では、すべての国や登場人物たちのあれこれに決着がついていきます。 物語を書いたことのある身で申しますと、最終巻というのはまとめるのがタイヘン。守り人シリーズのように、いろいろな国のいろいろな立場のいろいろな登場人物が、それぞれ自分の立場を主張しながら動く物語では、特にタイヘンだと思います。 中心となるのは新ヨゴ皇国&チャグム皇太子ですが、他にもロタ国の南方領主はどうなった~、サンガル国の動きは~、敵であるタルシュ帝国の後継者争いは~・・・そんな大きな動きから、『精霊の守り人』で出てきた何でも屋のトーヤ夫妻は~、『神の守り人』に出てきたチキサ・アスラの兄妹は~など小さな動き、はたまた、各国の密偵たちにいたるまで、作者は思い入れと気配りを忘れません。 そんな「総まとめ」の中、バルサはタンダを探し当て、傷ついた彼の腕を切り落とし、介抱します。これまでは外を出歩いて傷を負うのがバルサで、治療するのがタンダだったのに、今回その関係が逆転しているのが興味深いところ。バルサの刃物が、人の命をおびやかすのではなく、命を救うためにふるわれたのも、印象的です。 そしてチャグム皇子は、父帝のいる都へ帰り着きます。彼が他国で死んだと思われたのに生きのび、あちこちをさすらい、さまざまな事件に出会い・・・というあたりから、私は自作『海鳴りの石』の主人公フェナフ・レッドの運命と彼の運命とがだぶってきて、とても他人事とは思えなくなりました。 フェナフ・レッドもチャグムも、危機一髪、故国の危難を救うのですが、そのために払われた犠牲、流された血は、とてつもなくヘヴィーです。チャグムは、再会した父に向かって、思いきり開き直って自分自身をたたきつけます; 「赤戸ノ砦では屍を踏んで歩き、ヤズノ砦ではこの手に剣をもって、タルシュ兵を斬り殺しました。・・・兵士たちも、たくさん死なせてしまいました。 「わたしは穢れた人殺しです。――清らかな皇子をよそおうつもりなど、もうとうにありません。」 ――上橋菜穂子『天と地の守り人』第3部 しかも、純粋無垢で身も心も真っ白な少年だった彼が、このように血と汗と泥にまみれて苦しんだだけでは十分でなかったようです。純粋無垢を貫き通した父帝の命の犠牲があってこそ、チャグムの苦しみが実を結んだと私には思えます。言い換えれば、父帝の純粋さとは、少年時代のチャグム自身が持っていた純粋さであり、父を失うことでチャグムは二重に、無垢なる少年時代に別れを告げたのでしょう。 ともあれ、少年チャグム皇子はもういませんが、生きのびて新しい時代を築く大人のチャグムが(歴代の帝のように顔を布で覆ったりせず)しっかりと前を見据えて出発しましたから、めでたしめでたしというべきでしょう。 そして、タンダの小屋に再び茂った雑草のように、人々は穏やかにたくましく生きていく・・・大団円ですねえ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
June 22, 2007 10:12:25 PM
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