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カテゴリ:近ごろのファンタジー
図書館で、タイトルと表紙絵に惹かれてふと借りました。レトロでおしゃれで、軽いユーモアいっぱいの、動物ファンタジーです。
「ネズミの時計屋」というのがまずいいですね。主人公の時計師(と名刺に書いてあります)は、小粋な中年ネズミ(少しメタボが心配だけれど)。ドーナツが大好きで、高級アパートにペットの真っ赤なテントウムシと一緒にゆったりと住む、独身貴族。 このペットがまたステキです。ターフルという名で、餌は乾燥アブラムシ(缶入り)。テントウムシって、英語でladybirdというから、このテントウムシも雌ladyで、鳥かごbirdcageで飼われています。ペットに限らず、主人公の生活にはこういう細かい設定が他にもいくつもあって、おしゃれな雑貨屋さんみたいに可愛い感じ。 物語の舞台はネズミやモグラ、シマリス、カワウソなどの小動物の世界で、その点からいうと『楽しい川べ』のような古典的動物ファンタジーを受け継いでいます。ただ、こちらはぐっと都会的で、古めかしさはわざとレトロに凝っているため、という感じ。 ヒロインの女性冒険家リンカ・パーフリンガーが乗り回す飛行機は、銀色の単発プロペラ機、それで熱帯雨林の探検家のところへ飛ぶのですから、人間世界で言うとざっと100年ぐらい前の時代に似ています。 でも町では通りをタクシーが走っているし、前衛芸術や美容エステが幅をきかせています。 ストーリーは、主人公ハーマックス・タンタモク(作者が言葉遊びのボードゲームで思いついた名前だそうです)は、ヒロインの失踪の謎を追って、事件に巻き込まれていくのですが、謎解きも、ハラハラドキドキも、それほど鬼気迫ってはいなくて、余裕を持ちながら読めます。クライマックスのいろんな「!」も、斬新なトリックとかあっと驚く仕掛け、というよりは、オーソドックスな「おやおやなーんだ、なるほどそうね」と心地よい程度です。 すべては、おしゃれでかわいいネズミランドのサイズでまとめられているのですね。 原題は「Time Stops For No Mouse」、時の流れは止まらない、というもので、時計屋という主人公の職業にもぴったり。事件の中核を成すのも時の流れを止めようという「不老不死の妙薬」。これ自体は目新しいアイテムではないけれど、この妙薬を奪い合うのが、老いた権力者とかではなくて、美容業界のひとびとというのが、現代的でユーモラスです。お肌の老化をくいとめるクリームを開発する化粧品会社の女社長とか、美容整形外科のマッド・サイエンティストとか。 ちなみに、主人公ハーマックスは、ヒゲのお手入れに「ピンピン・ワックス」を欠かさず使い、旅行鞄にも忘れず入れています。ネズミのヒゲのワックスだなんて、想像すると可愛いです。 ともあれ、怒濤のようなスペクタクルや寝られなくなるミステリーに立ち向かうには気力が足りない、ちょっと疲れた心におすすめの、上品なファンタジーでした。 ところがこれまた絶版で、図書館で続編(3巻まであるそうです)を読むしかないみたいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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