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テーマ:アニメあれこれ(27188)
カテゴリ:映画と原作
若い頃、梅田の映画館に、ウナギを首に巻いて走っているごんぎつねの大きな看板がかかっているのを通りすがりに見て、一目惚れしてしまいました。その時は映画を見逃したのですが、あとでTV放映の時に録画して、何度も観たものです。
その古いビデオを久しぶりに子供たちと一緒に観ました。ナレーターはおなじみ市原悦子、ごんは田中真弓です。 ちなみにそのころ「天空の城ラピュタ」「銀河鉄道の夜」「アリオン」などで次々に田中真弓の声を聞いて好きになった私は、今でも彼女の声を聞くとなつかしい当時の頃を思い出します。 さて子供たちは小学校の国語の教科書で原作を習っています。私も教科書で読みましたから、息の長い教材なんですねえ。でも小学生のときはこの話は結末が理不尽だと思い、大キライでした。同じく教科書に載っていた「スーホの白い馬」もそうなんですが、なぜ素直で一途で無垢な動物が、人間に殺されなければならないのか、と納得できないんですね。 それに、それまで親しんできた勧善懲悪でハッピーエンドのおとぎ話のパターンを見事に裏切ってしまうのが耐えられなかったのです。今でも、(ファンタジーというのはトールキンの説くとおり、万事まるくおさまるのがお約束ですから)この手の話はかなり耐えられません。 悲劇がキライというのともちょっと違い、見るからに悲劇的な人たちが自分の運命を呪いながら(あるいはそれと戦いながら)悲劇的に死んでいく、というのならまるくおさまってOKなのです。 でも、ごんは、自分がなぜ殺されなければならないのか分からずに、殺されたということにすら気づかずに死んでいったに違いない。そう思うとたまりません。 さてアニメ映画では、原作になかった部分をたくさん加えてあり、ある意味ちがったごんぎつねになってはいるのですが、そこには、ごんの悲劇がなぜ起こったのか、の一つの答えが見えてくると思えます。 原作では村人の視点からごんのエピソードが語られているだけなのに対し、アニメではごんの幼少時代から語り起こされます。緑豊かな山の、ツバキの大木にある巣で、母ギツネの愛に包まれて暮らした“野生の”ごんぎつね。 しかし、母ギツネは猟犬に追われ、ごんを逃がしたあと鉄砲で撃たれて死にます。自然界での野生のキツネの暮らしに乱入してきた人間によって、ごんの悲劇はすでに始まっています。 ひとりではなかなか獲物もとれず、落ちた川に流されてとうとう里(“人間の世界”)にたどりついたごんは、拾ったイモを食べ、お寺の床下に寝、祭ばやしにうかれて、村に住みつくのです。 好奇心いっぱいのごんが、祭ばやしに合わせて踊ったり、鍛冶屋や妊婦さんのまねをしたりするのは、人間から見れば「まねっこギツネ」とほほえましいですが、キツネ本来の暮らしとしては、かなり不自然なものです。 いっぽう、畑を荒らしたり、盗み食いをしたりするのは、餌をあさるというキツネなら当然の行為なのに、人間から見れば「ぬすっとギツネ」ということになります。 ごんは、村人にとっては「まねっこギツネ」または「ぬすっとギツネ」なのです。 兵十はそう呼ばずに「ごん」と名付けました。ごん個人を自分と対等な存在として認識していたんですね。「おらが名付けただ」と嬉しそうに言う場面があります。ごんも兵十や彼の母を見るとき、自分とひきくらべたりして、対等に認識しているみたいです。 兵十とごんの関係を見ると、“自然”と“人間”は折り合って仲良くやっていけそうな気がします。 ところが、ここからはアニメでも原作どおり進んでいくのですが、兵十はウナギの誤解から、ごんと心が離れてしまいます。そもそも、優しい兵十も実は鉄砲撃ちのせがれだったわけで、その根っこのところでごんとはどうしても相容れない部分があったのでしょうね。 今まであんなに優しかった兵十、のろまで機転の利かないような兵十が、最後にギラリと目を光らせて、納屋の箱の奥から、しまいこんであった父の鉄砲を出してくるところは、とても迫力があります。誤解したままの彼はここに至ってついにごんを「ごん」と呼ばずに「あのぬすっとギツネめ」と言っています。他の村人と同じレベル、つまり友達としてのごんではなく、人里に出てきたなれなれしい獣、退治すべき害獣を見る目になってしまったのです。 “自然”と“人間”が、表面だけでなくほんとうの意味で理解し共存することが、どんなにむずかしいか。 アニメ版「ごんぎつね」はそのことを教えてくれるように思います。 ・・・名作です。 なのに、なぜかビデオもDVDも出ていません! ぜひ出してほしいです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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