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HANNAのファンタジー気分

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December 17, 2022
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カテゴリ:気になる絵本
 復刊ドットコムのお知らせに、絵本『つきよにごようじん』復刊とありました。
 NHK「みんなの歌」のトラウマ・ソングとして有名な「まっくら森の歌」の方は、このお知らせを読むまで知りませんでしたが、絵本は手元にあります。むかし初版本を、たしか大谷美術館(西宮市)の絵本展の売店で入手したのです。

 幻想的な絵(本橋靖昭。この人が「まっくら森」世界の生みの親だそうです)も好みでしたが、ストーリーの書き方が不思議で・・・、説明がほとんどなく、うっかり読み進むと最後に、え?となるのです。で、もう一度読むと、よけいに謎めいた感じが強くなるのです。(以下、ネタバレ!)

 森の番人が小屋を出て夜回りに行くのですが、絵の時計を見ると時刻は10時半。よい子は寝ている時間だから、年少読者はわくわくします。
 すでに窓から小さい怪獣が覗いているし、小屋の中の小物にも怪獣ぽいデザインのものがあって、細部を見ていくと楽しい(『バムとケロ』シリーズなんかもそうですね)。

  くもまがくれの つきあかり。
  みかづきどきには ごようじん。  ――齋藤浩誠『つきよにごようじん』(以下もすべて)

 背景に三日月が出ています。人面に見える木々や覗く小さな目。で、次のページなんですが、

  がさ がさ がさ おおきなあしおと。
  ひた ひた ひた しのびよる あやしげなあしおと。

大小の怪獣にあとをつけられているように読めます。たしかにいろんなシルエットが番人の背後や周囲に覗いています。
 続く数ページで、森の動物たちが「おおかみねずみに おおかみがえる、おおかみうさぎに…」と皆オオカミ化して、「ブレーメンの音楽隊」のように縦に積み重なったり、キバを向いてとびだしてきたりして、それなりに怖い! 番人も走って逃げています。
 でも、実は追いかけてくるのは本来は小動物(やや大きな怪獣が1ぴきいますけど)ばかりで、「もりのちいさな へんしんおおかみ」なんですね。
 森の外れに出ると、動物たちは本来の無害な姿に戻り、

  いつのまにやら まんげつが、 もりを まあるく てらしだす。

あれれ? 最初、三日月じゃなかった? ファンタジーだから月が変わるのかしら? と思っていると、(→核心ネタバレ)さっきより格段にすごい絵で、ふりかえった番人は、満月のもと、巨大な狼男に変身! 逃げ帰る小動物たち、ぼーと鳴くふくろう。これで終わりです。
 この最後のどんでん返しが面白怖くて、子供には人気なんでしょうね。
 
 ところで、月夜にご用心しなければならなかったのは、誰でしょう?
 さらに、読み返してみます。絵本の表紙裏には木がびっしりの地図があり、これも参考にしながら・・・、すると東?の方に「みかづきもり」があって、実は最初に出てきた三日月が、本当の三日月ではないことに気づきます。絵をよく見ると、森や雲のシルエットに邪魔されて、上ってきた満月が低いうちは三日月に見え、光もおぼろなのがわかります。
 森にさすほのかな月光の効果?で小動物たちはオオカミ化しているのでしょうか。そして番人はこの程度の月光では変化しないので、必死に逃げているのでしょうか。
 
 番人はさいしょから「おおおとこ」と呼ばれていて、「がさ がさ がさ おおきなあしおと。」は番人自身の足音だったようです。そして地図でいう「つきみのおか」まで来るとあたりは開けて満月は全貌を現し、月光をいっぱいにあびて・・・、おおおとこはついに狼男になるのです。こうなると最強で、もう逃げなくてよいわけです、
 満月の狼男、定番ですがいちばん恐ろしい。
 ついでに、「おおかみおとこ」から「かみ」を抜くと「おおおとこ」になるんですけど、確かに番人はスキンヘッドなんです・・・って、深読みしすぎかな?

 最初と最後にしかめつらのふくろうが居て、すべてを見守っているかのようです。

 “月夜にご用心”して読み進まねばならないのは、じつは読者だったりして。
 シンプルな文章とストーリーなのに、何度も味わえる。そんな絵本です。

 ところで、地図には、このストーリーには出てこない部分も記されています。番人小屋の西?に広がる「まっくらもり」や、川、海の中には「つきのはな」「かいぶつゴラゴラ」「きかいじかけのさかな」、すべてがとっても気になります。
 もしかして絵本『まっくら森』には出てくるのかしら。残念ながらこちらは絶版のままです。これも復刊されますように!





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Last updated  December 21, 2022 01:08:38 AM
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