『おおきく振りかぶって』 10巻 ひぐちアサ作 感想
発売日に書店にすっ飛んで買いに行きました!!。「花井、頑張りました!!」の巻でした。表紙は埼玉のメンバーですね。背が高いのが大地、左から二番目が主将、三番目が市原(たぶん)。「私、9巻の内容、忘れちゃってる?。」と・・・。てっきり埼玉は天然おバカ・大地主体で来るのかと思いこんでたもので、投手・市原主体で「あれ?。」って。西浦と戦うまで、埼玉は本当の本気で戦ったことがなかったのですね。どうやったら一点が取れるか、どうやったら勝てるか・・・そう言うことを考えずに野球をしてきた。試合を進めていく中で、主に投手の市原の心理描写を通して、それに気付いていく様子が描かれてます。負けるにしたって、アウト取らなきゃ終われねぇんだから、野球ってシンドイなぁ。マウンドには他じゃ味わえない“何”かがあんだよな。バッターに投げ勝ってのガッツポーズ。少しでも長く試合をしたい。丁寧に心理の変化を表現するところは相変わらず。試合に負けた悔しさ、でもそれは桐青の子達とは違う。大地の「もっと一生懸命野球をやりたい。」のセリフでそれを表してます。さて、西浦側。先ず三橋。埼玉の捕手の大地はサインを出せないので、投手の市原が自分で考えてます。三橋も三星にいる時は、自分で考えざるを得なかった。だから三橋には市原の心理が良く分かる。阿部は激怒しますが、ホームベースに被さってくる三橋に、市原はデッドボールを恐がる。リードしてもらってない市原、投手が一人で考えていたら、自分なら「外へ逃げる、一番コントロールしやすいストレートで」投げると思う。三橋にとっては三星時代のことは辛い思い出ですが、それをプラスに生かしたのですよね。そこに三橋の成長を見るし、野球に対する三橋の芯の強さを感じました。それと結局、環境ってすごく大事なんだなぁって思いました。三橋がそれを出来るようになったのは、西浦の環境があってこそですから。そして今巻の主役(笑)の花井。打てない・投げられないにも係わらず、「チビッ子めぇ、溢れる野球センスだな。」(by ルカさん)なところを見せる田島。一方、四番に据えられた花井は打てない!!。どんどん煮詰まってくる。三橋のちょっとした言葉もネガティブに捉えてしまう考えすぎ状態。ついには三橋に八つ当たり気味のきつい言葉を言ってしまう。このプレッシャーを良しとして、様子を見るモモカンが大したものですよ。グラウンド整備の最中、八つ当たりを三橋に謝る花井。これが相手が三橋だから通じない、通じない。(笑何故か話題は投手のことに。花井は、三橋も日々誰かと競って頑張っていることを知る。それが三橋の為には“いい”んだと思う。どうにかして越えてやりてぇって、毎日挑戦と結果が苦しくて、それで“いい”だと気付く。そして「俺は田島と競うぞ!!。」と思えるようになる。とても良いシーンでした。こういう所、ひぐち先生ってホントに上手いです。もう一つ、このシーンには意味があるんですよね。三橋は中学時代の経験から、自信を持たせることが必要だった。エースは三橋のものだと三橋が自分で信じられる必要があった。けれど桐青戦で階段を一段登って、更に上に昇るのに必要な“競う”を、三橋が出来る状態にあることを、花井が認めたことになるんですよね。これは大きいと思います。六回裏・西浦の攻撃。目標のコールドを決められるか?と言う回です。ここで埼玉バッテリーは三番・泉を敬遠で歩かせる。四番打者には屈辱です。自分の評価は泉以下だと思う花井。結局どいつもこいつも競争相手。でも競争のないチームなんてダメだ。なら、田島は誰と競うんだ?・・・。そして立ったバッターボックス。二打点のヒット、八点目を叩き出しました。「二打点じゃん。」と田島に言われ、やっぱり嬉しそうな花井が可愛いです。田島もまた競ってる。しかも田島の場合、楽しんでるからなぁ、完全に。いつか田島から「悔しい!!。」って言われると良いね、花井。今回、阿部の父母が登場。母・・・そうか、これが阿部を生んだ人か・・・。父・・・阿部君、母親似で良かったね。グラウンド整備の時の三橋と花井を見て、田島が“いじめ”と勘違いするんですが、これが爆笑モノ。脱力して他メンバーが疲れる中、平然と「オレは慣れてるぜ。」の泉君が面白い。同じクラスですものね、苦労がしのばれますわ。田島はホントに三橋の兄って感じ。で、阿部君はお母さんよ。(笑今回も三橋の行動に怒りまくり、それを堪えるのに必死。埼玉の主将はたった一人の三年生。“最後”にかける思いが切ない。負けて、ナインに「ありがとうな。」と言う主将。対して一年の大地は悔しい、もっと一生懸命野球をやりたい、と思う。去って行く者、これからの者の対照が印象的でした。大地に悔しいと思わせた最後の打席。大地がホームラン打ってもコールドには影響なしってことで、阿部君は勝負を決める。打った球はフェンス際で花井のグローブへ。三橋が投げ勝ちました。阿部君ってホント、イイ性格してるよね、大したものだわ。二冊で試合にけりが付いたのが良かったです。桐青戦は確かに面白いけど、一気読みじゃなくて単行本の発売を待つ状態だったら、かなり辛かったかなと思って。カバー取った表紙、背表紙に「大地成長物語」。一生懸命野球をやった成果が出る試合が見られたら良いな。さぁて、次の主役は誰でしょうか。そして西浦にどんな難問が待ってるかな。11巻、早く出ないかな。