愛情の深さは死をも許容する
「ママ、死にたいなら死んでもいいよ」(岸田ひろ美著、致知出版社)を読みました。「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」の作者、岸田奈美さんのお母さんが初めて著わした実話です。私は「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」に初めて接したのはNHKテレビで放送された同名のプレミアドラマ。主人公の岸田奈美さん役を演じいていた河合優実さんの出世作、と私は勝手に思っています。その後は「家族だから~」の原作だけでなく岸田奈美さんの本は出版されるたびに読んできました。岸田奈美さんのお母さんも本を出していることは知っていましたが、娘の奈美さんが書かれていることから内容はだいたい想像できるのでどうしても買って読みたいとまでは思っていませんでした。が、最近この本が古本屋で242円(定価1,400円)で売られているのを見つけ、それならと読んでみることにしましたがこれが「当たり」でした。本書は2部構成になっていて、第1部は自らの生い立ちからダウン症の息子の誕生、夫の急逝、自分が大病にかかるまで。著者の小さい頃のことは別として、家族に起きたことはある程度、娘奈美さんの本を通して知っていました。奈美さんの本で読んだ弟良太君のダウン症のこと、父親との突然の別れ、そして母親が大動脈解離となり車いす生活になったことなど、娘の視点で見たこれらのことが本書では母親の視点から描かれていて、何となく既視感をもちました。著者が本当に伝えたかったのは第2部ではなかったかと思います。もちろん、第1部を下敷きにして、です。第2部は、車いす生活になり一度は絶望の淵に立たされた著者の、復活劇の物語です。著者は一時はもう自分にはできることは何もないとまで思い詰めます。が、そこから再び立ち直り、立ち上がる自分の様子を詳細に記録しています。次々と起こる試練を「不幸」と捉えずに、人生の転機だと思えるようになるには時間がかかり、容易なことではなかったでしょう。しかし著者はそれを成し遂げ、さらに講演活動などを通して周囲をも感化していきます。本書の最後に著者と娘の往復書簡があります。いつも笑顔を絶やさない著者が暗い病室のなかで人知れず涙を流していた。それを目撃してしまった娘は自分が医者に手術をしてと頼んだために母を死ぬよりつらい状況に追い込んだと思い、苦しみます。そしてあるとき母親がふともらした「もう死にたい」という言葉を受けて自然に「ママ、死にたいなら死んでもいいよ」という言葉を発したのです。岸田親子の著書はどちらも壮絶な内容でありながら、さわやかな読後感があります。新本を買ってもよかったな。