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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2021.09.18
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​連邦最高裁のClarence Thomas裁判官が、招かれた大学での講演で、近年、連邦最高裁に向けられている批判に反論したそうです。

https://www.washingtonpost.com/politics/courts_law/justice-clarence-thomas/2021/09/16/d2ddc1ba-1714-11ec-a5e5-ceecb895922f_story.html

近年の批判、といっても、色々あるようですが、おそらく一番大きな批判は、二極化した政治状況を反映して、最高裁判所の判断も、法的解釈というよりは個々の裁判官の政治的信条がどこにあるかで左右されているのではないか、というものだと思われます。

Thomas裁判官は、この批判に対して、明確に、裁判官は個人的好みに基づいて判断することなどないし、望む結果が得られない時に、メディアが、政治的信条のせいであるかのように報道することは、法制度への信頼を危うくしてしまう危険がある、望む時に望む結果が得られないから司法機関そのものを破壊しようという動きの危険性(destroying our institutions because they don't give us what we want, when we want)を警告したそうです。

この辺は、バイデン政権が、有名なGinsburg裁判官死亡後に、最高裁判所の裁判官数を増やすことを検討する委員会を設立したことも念頭に置いているのではないか、と記事にありました。

Thomas裁判官だけでなく、Breyer裁判官、最も最近任命されたBarrett裁判官も、それぞれの講演で、それぞれの言い方で、裁判所、裁判官の独立を擁護していたことがニュースになっていたので注目していたのですが、9人しかいない最高裁の裁判官から、3人続けて、このような意見表明が出てくるというのは、それだけ、裁判官達の危機感が強いのだろうと感じます。

最高裁の裁判官が誰になるかが連日のトップニュースになるアメリカで、個々の裁判官が、自分の職務に集中する環境を整えるのは、ただでさえ、元々本当に大変なことなのだと思いますが、確かに、近年の政治状況の二極化は、他国民の目から見ても驚くしかないレベルになってきているので、その中で、司法の位置付け、司法の役割に対して根本的な不信感が醸成されることは、絶対に避けたいということなのだと思います。

私も、個人的にこういう言論に触れて心からほっとします。以前、法律家ではないお勉強仲間に、広島地裁の黒い雨判決の評価をめぐって、法律家に求められる能力について、下記のようにコメントしたことがあります。少し長いのですが、私が、Thomas裁判官の仰っていることに非常に安堵した理由の説明になるかなと思い、貼り付けますね。

裁判官一人一人は、憲法上、独立した地位を持っているので、裁判官によって考え方や価値観が違うことは当然の前提です。
ただ、その自由裁量も、当然、「司法」である以上、法律には従わなければいけないわけです。これはどういうことかというと、自分の出した判決が法律の解釈の範囲内にあるということを、説得的に文章で説明しなければなりません。裁判官個人がどのような価値観や心情を持っているかはともかくとして、この文章が論理的に説得的であることが、法曹に求められる能力ということになります。

余談ですが、弁護士も、自分の思想信条にクライアントの要望が一致しているかどうかで仕事をしているわけではありません。クライアントの要望が、誰が見ても自明な法的解釈でストレートに流れれば良いのですが、そうではないケースでも、法律の趣旨に遡って、こう解釈すべきだ、こう当てはめるべきだみたいなことを、いかに説得的に論理を流すかが、大事な能力になります。
 
その意味で、今回の判決は、法律の趣旨がこうだから、文言はこう解釈すべきだ、そして、その文言を適用するための基準はこうあるべきだ、そこを具体的にあてはめていくと、今回の原告は救済対象になる、と論理を流しており、その論理の流れがよどみなく説得的だと私は思ったので、王道的司法判断とコメントした次第です。

仮に、裁判官が、「原告が高齢でかわいそうだから救済してあげるべきだ」みたいな理由で勝訴判決を書いても、結果が望み通りとはいえ、さすがに国の控訴のやむなしでしょ、と思ってしまうと思います。
 
Thomas裁判官は、それ以外にも、色々なことをお話しくださったようで、代理人の法廷での口頭弁論に心動かされて判断が変わったことは、ほぼまったくない、と答えて、会場の笑いを誘い、やはり、口頭弁論以前に提出されている書面の質が決定的と述べたそうです。
この辺は、国を超えて分かりますね。分かりやすい文章で説得的に論理を流しつつ当該事案のあるべき結論を示す書面を提出することは、実務家の基本スキルです。

日本の最高裁裁判官は、どんな考え方をしているのでしょうね。
退官された方のインタビューなどは本当に貴重ですが、現役の裁判官の声も聞いてみたいな、等と、こういう報道を見ると感じた私でした。





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Last updated  2021.09.18 07:58:38
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