誰に負けても構わない、自分には負けられない
さだまさしさんの大ファンの母が「車の中で聴くといいわよ」と、以前、手渡してくれた、彼のライブを収録したアルバム、今日、ふと車の中で思い立ってかけてみて、心に引っ掛かって何度もリピートしてしまった曲があった。「虹~ヒーロー~」という曲で、さださんが、歌手という職業に込める想いを切々と歌い上げた曲。ささやかな人生でもドラマチックな人生でも、目の前に情景が浮かぶかのように巧みに切り取る天賦の才を持つさださんだが、この曲は、ほかならぬさださん自身の歌に対する想いを切り取った歌だから、言葉が魂の発露という感じで、歌い方も情念がこもっているというか、聴く人の心を惹きつける曲だ。サビは、こんな感じ。I'm a Singer虹になりたいひとときのヒーロー演じてそしてI'm a Singer君の空をひとときでも僕の色で染められたらそれでいいYes, I'm a Singer虹になりたいひとときのヒーロー演じてそしてI'm a Singer振り返ったら幻のように消え去るもの誰かのしあわせと入れ違いにさださんは、本気で、歌っている時に虹になりたいと思っているんだ、と思う。だからこそ、あれだけ長い間、第一線で歌い続けてらっしゃるのだろう。多くの人の心に虹をかけ続けていらっしゃるのだろう。ただ、私の心に一番突き刺さった一節はサビではなくて、ここ。誰に負けても構わない自分には負けられないいつか時が過ぎて思い出に変わったとき目をそむけないでいたいだろう僕はまだ旅の途中「誰に負けても構わない、自分には負けられない」・・・そうだ、自分には負けられないって思った。東日本大震災以来、自分の無力さを思い知らされる体験に圧倒され気味。大切な土地に住む大切な人々が悲しんでいる時に、自分のできることのなんと小さいことか、なんと自分はちっぽけな存在であることか、日々実感している。自分にできることをやる、そう思うけど、自己満足にすぎないのかもしれない、って、時々心をひゅっと暗い影がかすめていく。自分を鼓舞して、頭を振って暗い影を振り払おうとしているけれど、でも、正直なところ、被災地に行った後、原発賠償説明会を実施した後、被災地の仲間の疲れが滲み出る顔を見た後は、眠れなくなる。無力感で一杯になる。でも、無力感で一杯になっても、それでも、動かなかったら、もっと辛くなる。誰かに勝ちたいわけじゃない、褒めてほしいわけじゃない。お金がほしいわけじゃない、名誉がほしいわけじゃない。私は、ただ、自分に負けたくないんだ。その姿が、ちっぽけであっても、もがく姿がちっとも美しくなくても、自分は、自分の人生に嘘をつきたくない。自分には負けられない、絶対に負けられない。いつかこの震災の傷跡も癒される日が必ず来る。そのときに、過去をまっすぐに堂々と見つめられるように、私は今を一生懸命に生きていきたい、今日、強くそう思いました。