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弁護士YA日記

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日出町法律事務所
2019年6月より1年間、日本弁護士連合会客員研究員としてイリノイ大学アーバナシャンペーン校に留学後、弁護士業務を再開しました。
弁護士葦名ゆき(あしな・ゆき)
2011.08.22
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カテゴリ:東日本大震災
相馬訪問記その1
http://plaza.rakuten.co.jp/yyy0801/diary/201108210000/
相馬訪問記その2
http://plaza.rakuten.co.jp/yyy0801/diary/201108220000/
相馬本問記その3
http://plaza.rakuten.co.jp/yyy0801/diary/201108220001/

さて、その3で見た課題を克服するにはどうすればいいのだろうか。

 まず、前提としてどうしても強調しておきたいことがある。
 弁護士(会)も手をこまねいているわけではないということ。
 特に地元、福島県弁護士会の弁護士は、自らが被災しているにもかかわらず、日々、心身を削るようにして、住民の支援に奔走している。

 私がこれまで書いてきたことが、いささかでも被災地の弁護士を傷つけてしまっていたら心から申し訳ないと思う。
 被災地の弁護士に対しては心からの敬意と応援の気持ちこそあれ、批判する気持ちになったことは一度たりとも一瞬たりともない。誰かを責めたいのではなく、現状を踏まえて、これからどうすればいいのかを真剣に考えたいだけなのであるから。

 本題に入ると、まずは、弁護士にアクセスできる窓口を飛躍的に増大させることが必須である。
 現状、無料電話相談が常時あり、9月1日からはADR手続に向け、地元福島県弁護士会においてADR手続の問い合わせを受けるための被害者救援センターの受付が始まる。チラシを見る限り、アクセスしてきた住民に、最寄りの弁護士事務所を紹介するという試みのようであり、センターに救われる住民もかなり出てくるだろう。大々的な宣伝をすれば、アクセスする住民は相当多数に上るはずだ。

 また、各地で、弁護団結成の動きがあり、アクセスしてきた人に請求手続を代行するサービスも準備中だ。全国各地に避難者がいるのであるから、この動きが正しい方向を向いていることは間違いない。

 ただ、徹底的に住民目線に立った時、これだけでは決定的に足りない。
 それは、あくまでも「アクセスしてきた人」を対象にしている点に原因がある。
 その3で見たように、そもそも弁護士が損害賠償手続を助けてくれる存在だという認識がない人に対しては、いくら宣伝しても、重い腰が上がらない。
 
 今回、仮設住宅集会所での説明会でも、「弁護士さんって分かりやすいんだねえ、普段馴染みがないからわかんなかった」と言って下さった方がいたため、「今後も何か分からないことがあったら弁護士会に聞いて下さいね~」と笑顔で地元福島県弁護士会の窓口をご案内すると、消え入りそうな小さな声でぽつりと一言。

「何でも聞いて下さいっていわれても、何を聞いたらいいだか、わかんねえんだ。こうやって目のまんまえにいれば、思い切って聞いてみること、できんだけど」

 懐かしい懐かしい相馬弁の柔らかい響きに何てお答えしようかと思い、言葉に詰まった。その方の言葉がとても心に沁みた。
 そして、直感的に確信した。これは、おそらく多くの住民の偽らざる本音だと。
 そして、この本音を切り捨てた制度構築をしてはいけないと。

やはり、求める人の傍まで手を伸ばし、必要な支援を行う「アウトリーチ」(この言葉を法律家として使い始めたのは太田晃弘弁護士)が、今回の賠償請求の場合、絶対的に必要なのだ。

 そして、このアウトリーチ、行うためには、熱意だけではどうにもこうにも足りない。仮設住宅をはじめ、住民のニーズがありそうなところに赴くだけのマンパワーが必要なのである。

 マンパワー、現時点では、地元弁護士会が手が回らないところをフォローしようと関東10県と東京の3弁護士会から、毎週、弁護士を派遣して、仮設住宅を回っている。私は、その事業の派遣責任者だ。被災地に行って住民を助けたいという弁護士の熱意はびっくりする程で、応募してくる弁護士の人数は多すぎることこそあれ、人手が足りなかったということは一度もない。

 じゃあ、いいじゃん、という単純な問題ではない。
 とにかく遠方から多額の費用をかけて派遣する以上、住民が集まってくれていないと意味はない。そのため、たとえば相馬支部の場合、自治体の職員が説明会の広報の協力をしてくれる南相馬市にしか派遣ができない。本当は、30キロ圏外の相馬市、新地町にだって、弁護士の助力を必要とする人々が沢山いることは分かっているのだけれど、広報できなければ、遠隔地派遣は非効率この上ないのだ。

 また、今回、訪問した仮設住宅集会所でも帰り際に「今度はいつ弁護士さん来てくれるの」と聞かれ、言葉に詰まった。遠隔地派遣で、幾ら応募者が多いといっても、週に1回の派遣が限度で、数十もある仮設住宅の集会所を一つ一つ潰している現状で、一つの集会所に複数回、回る予定はとても組めない。

 と考えてくると、私の中で、対策は自ずと絞られてくる。
 そう、「原発事故損害賠償問題に特化した法的支援を行うことができる拠点事務所」を福島県浜通りに設置することだ。

 理想的なイメージをいうと、その事務所には、原発問題しか行わない弁護士が複数、常駐して、手分けして仮設住宅集会所を回る。
 広報は、その拠点事務所の事務スタッフが、チラシ作成から配布まで責任をもって行い、自治体職員の熱意に左右されずに広報できる体制を整える。
 拠点事務所には、いつも必ず弁護士が一人はいて、不意に訪れる住民の相談にもいつでも応じられる体制を整える。

 こういう体制を整えることができれば、手探りで遠隔地から派遣する必要はなく、補完的な役割に徹することができるし、後方支援だってもっと腰を据えて取り組める。
・・・書きながら、本当に本当にこういう事務所を作れないものか、本気で考えている。

 問題は財源だが、何とか国に出してもらえないのか。複数の弁護士と事務スタッフが常駐するのだからそれなりのお金はかかる。これをすべて弁護士会が出すのは、普通に考えて厳しいし、そもそも、法的サービスを充実させるのは国の責務でもある。
既存の制度を使う場合は、法テラスの事務所を置くことがもっとも手っ取り早い。

 仮に100歩譲って弁護士会の責任で設置することになったとしても(ひまわり基金制度を活用することになるか)、原発問題に特化する弁護士が常駐してほしい。

 そして、仮に百万歩譲っても(譲りすぎ?)、事務スタッフだけでも置いてもらえれば、広報ができる。広報ができれば、弁護士を派遣することができる。

 法テラスに対しては、アレルギー的な反応も含め、賛否両論があることは私も分かっている。ここでは、一つ一つの論拠を潰していこうと思わない。
 ただ一つ言えるのは、住民目線に経ったとき、「法テラスが信用できない」「パイを取られる」などの議論は弁護士という職業に限定されたコップの中の嵐であり、置き去りにされ、放置され、賠償請求からこぼれ落ちて、絶望の淵に追いやられてしまう真の被害者は、「弁護士」ではなく「市民」であるということだ。

 市民に身近な司法を目指した司法改革が始まって10年、弁護士が本当に市民の味方と認知されるかどうかが、今こそ試されていると思う。

 ほお・・・やっと、相馬訪問記を書き終わった。でも、現場で感じた肌で感じた危機感を忘れないうちに、どうしてもアップしたかった。乱筆乱文、ご容赦下さい。
 





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Last updated  2011.08.23 00:30:10
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