(株)セブン&アイ・ホールディングス 【東証1部:3382】 - 【2】マーケティングの極意 ―「見えるもの」より「見えないもの」を見よ
「マーケティングの基本は、顧客が潜在的に求めているものを察知し、満足を提供できるかどうかにある」。鈴木流経営学の第二の特徴は顧客の潜在的なニーズを重視する点だ。ただ、それは目には見えない。一方、顕在的なニーズはPOS(販売時点情報管理)データの売り上げの数字に表れ、目に見える。そこに目が奪われ、また同じものを発注しがちだ。しかし、POSデータは昨日までのヒストリーの数字であり、ミステリーである明日の顧客ニーズとは必ずしも一致しない。結果、売れ残る。「その廃棄ロスも目に見えます。これに目を奪われると守りの経営になり、発注量を抑えようとする。むやみに発注量を減らせば欠品が増え、顧客は来店してもほしい商品がないため、次第に足が遠のいていく。経営は縮小均衡の道をたどるのです」(鈴木氏) これに対し、目に見えない潜在的ニーズに目を向けるとどうなるか。例えば、春先でも予報で明日は気温が上がりそうなら、「冷やし中華を発注してみよう」と考える。翌日、汗ばむ陽気の中、来店した顧客は冷やし中華を目にして潜在的ニーズを刺激される。顧客はまた来店しようと思い、経営は拡大均衡に向かう。 目に見えるものより、見えないものにひたすら目を向けるのが鈴木流マーケティングの極意だ。プレジデントロイター - 2009年 5月 23日