東海旅客鉄道(株) 【東証1部:9022】 - 環境戦略を語る
07年度の国内の温室効果ガス排出量は、二酸化炭素(CO2)換算で基準年(CO2は90年)比9%増の13億7400万トンに達した。CO2排出量の約2割を占める運輸部門での削減にどう取り組むのか。東海旅客鉄道(株)【東証1部:9022】の松本正之社長に聞いた。【聞き手・塚田健太、写真・内藤絵美】 技術開発、CO2削減に --07年度のCO2排出量が基準年比約15%増となっている運輸部門での削減をどう進めるべきですか。 輸送機関の特性にあった使い分けが大事です。飛行機、自動車よりもエネルギー効率の高い鉄道は、国内の旅客輸送量の約3割を担いながら、エネルギー使用量は7%、CO2排出量は5%にすぎません。東京-大阪間では、東海道新幹線の排出量は飛行機の10分の1。乗客数で8割を占める新幹線(排出量年間約30万トン)に対し、2割の飛行機は倍近くを排出しています。 --鉄道の優位性を高めるためのJR東海の取り組みは? 一つは車両を省エネ型にする。たとえばモーターの重さは、初代のゼロ系の825キロから最新型のN700系は398キロと半分に。車両は25%軽くなりました。 また、東海道新幹線はきついカーブが多く、加減速時に余分なエネルギーがかかります。でも、車両がカーブに入った時にかかる遠心力による傾きをあらかじめコンピューターで計算し、カーブに合わせて車体を傾けると直線と同じ速度で通過できます。そのための車両と地上の信号設備のシステムを整備し、乗り心地と省エネ性の改善を実現しました。これらの積み重ねで、ゼロ系に比べ、N700系は220キロで走れば5割、270キロでも32%エネルギー消費を減らしました。 --技術開発以外で大事なことは? 省エネ性の高い輸送機関を利用客が選んでくれるよう安全性、快適性、利便性の向上を図ることです。例えば、東京-大阪間の飛行機の利用者がすべて新幹線に移れば、排出量は約半分になります。環境負荷の少ない移動方法を呼びかける「エコ出張」キャンペーンとともに、携帯電話で指定席を予約でき、チケットなしで乗車できるサービスの提供や、車内でのインターネット接続環境の整備などで、乗客に選ばれる新幹線を作っていけば、結果としてCO2削減につながるのです。 --リニア中央新幹線ができるとエネルギー消費量は増えてしまうのでは? 時間が半分になる代わり、新幹線に比べ3倍になりますが、飛行機比では3分の1程度。東京-大阪間が1時間になれば、高速輸送はすべて鉄道に代わります。これは、東京-名古屋、仙台間の航空便が、新幹線の影響でなくなったことからも明らかです。鉄道へのシフトが進めば、トータルとして省エネ効果を期待できます。============== ■人物略歴 ◇まつもと・まさゆき 名古屋大法卒、67年旧国鉄入社。JR東海新幹線鉄道事業本部管理部長、専務、副社長などを経て04年6月から社長。三重県伊勢市出身。65歳。毎日新聞 2009年5月18日 東京朝刊