東京電力(株) 【東証1部:9501】 - 「資材」出身だからわかる「東電の常識、社会の非常識」(上)
清水正孝・東京電力(株)【東証1部:9501】社長に聞く昨年7月の新潟県中越沖地震以来、柏崎刈羽原発が稼働停止している東京電力。今年6月に社長に就任した清水正孝社長にとって、猛暑が予想された夏をいかに乗り切るのかが最大の課題だった。ではどのようにして夏を迎えたか。そして今後、柏崎刈羽原発の再稼働はいつになるのか。清水社長に直撃した。(月刊 BOSS 2008年11月号掲載)助かったお盆開けの雨―― 新潟県中越沖地震(昨年7月)で柏崎刈羽原子力発電所が止まってから2度目の夏が終わりました。まずは、この夏を振り返ってほしいのですが。 柏崎刈羽原発が止まっているということで、みなさまには大変ご心配をかけています。我々としては供給力に万全を期すということで取り組んできましたが、7月はものすごく暑かった。平均気温は平年より3度か4度高かったはずです。その影響で電力需要も、全国的に記録を更新するほどの伸びでした。 そして迎えた8月ですが、初旬はその暑さが続き、8月8日に6089万キロワットの需要がありました。我々の需要想定のピークは、6100万キロワット程度でしたから、それに迫るところまできたのです。 我々が例年、いちばん神経を尖らせるのが、お盆明けです。工場が一斉に稼働しますし、しかも甲子園で熱戦が繰り広げられているからテレビをつけている家庭も多い。加えて今年は北京オリンピックが開かれていたから、このまま暑さが続いたらどうなるかと気になっていたわけですが、幸い天気は雨模様になり、気温も低く推移したため、電力の需要は夏の割にはそれほど伸びませんでした。―― 去年はなんの準備もなく夏を迎えたわけですが、その点、今年は十分、対策を立てることができたでしょう。 おっしゃるとおりですね。柏崎刈羽の発電量は820万キロワットです。これだけの電力を他の手段で確保しなければなりませんでしたからね。 古くなった休止していた横須賀火力発電所などを再開させる一方で、新規の火力発電所の稼働を前倒しにする等の対策を立てて夏を迎えています。その結果、需要が6600万キロワットぐらいまでなら安定供給ができるよう準備を進めてきました。 だけどこれは単なる数字の積み上げにすぎません。古い火力発電所を稼働させるということは、たとえてみれば老人にフルマラソンを走らせるようなもので、停止するリスクもあるということ。しかも気温によって、どう需要が増えるかわかりません。ですから、昨年に続いて省電力のお願いをしてきました。―― 自分たちのつくった商品(電気)を使うなというのですから、一種の自己矛盾ですね(笑)。 そうはいっても、われわれがまず心がけなければならないのが電気の安定供給です。これがわれわれの第1の使命ですからね。ただそうは言っても、自分たちの商品を売ることができないというのは、少し複雑な心境ですね。―― もっとも、オイルショックのあとから、電力会社は一貫して節電、省エネを呼びかけてきましたから、いまに始まったことではありません。 少し理念的すぎるかもしれませんが、われわれが省エネ、節電と呼びかけている真意は、必要なエネルギーはきちんと供給するけれど、無駄なところのはやめようじゃないですか、ということです。 ですからオール電化などはどんどん進めてほしい。これはCO2対策としても非常に意味があると思いますから。だけどその一方で、たとえばテレビの待機電力なんか、1年を通したらとんでもない量になる。そういうものが無駄遣いだと言っているわけです。温暖化対策にも有効です。原発再稼働へのプロセス―― CO2対策のためにも柏崎刈羽原発の早期稼働開始が必要です。再開までにあとどのくらい時間がかかるのですか。 いちばん大事なのは被災をしたわけですから、その設備の健全性が保たれているかどうか。これを点検、調査して異常があれば直す。これについては、ある程度計画どおり着々と進んでいます。重要な設備については、決定的なダメージはないというのは、だいたいわかってきました。 もう1つのプロセスは、これだけの地震を受けたことを踏まえて、どのくらいの地震に耐えられればいいのかという議論です。これは耐震安全性の議論で、経験値を踏まえて分析、調査をし、いろんな知見を集め、これくらいのレベルで大丈夫なようにしよう――これを基準地震動といいますが――これをいま国の保安委員会、あるいは安全委員会の審議会で審議していただいています。 この結論がいつ出るかについては、われわれが言うべきことではありません。ただ手順からいうと、基準地震動が決まれば、それに既設の設備が持つか、バックチェックする。そうして、この部分は補強が必要だとなれば、それをやる、ということです。 それから、いまの設備の評価というのは単体ごとにやっていますが、設備というのはシステムですから、系統試験というのを行って、システムとしてきちんと動くことを確認しなければなりません。これをこれから始めます。そのうえで、これで異常がないとすれば、いよいよ蒸気を起こしてみる、という手順になります。 ただ、これは設備を中心とした復旧工事の話にすぎません。それ以上に大事なことは、地元の安全安心をどうやって獲得できるかということですし、そのためには地元の方々に信頼され、理解をしていただかなければなりません。そこでわれわれは昨年7月以来、地域の方々、自治体に対し、いまどういう作業を行っているのか、チラシにして配布するなど、きめ細かいことの積み重ねをやっている。その結果として理解が得られ、信頼を回復できると考えています。それなくして再開はあり得ません。―― 地元では再開の要望が強いのではないですか。 アンケートすると、そういう結果が出ています。6割の市民が早期再開を望むと。―― 原発が稼働するかどうかで税収もまるで違うでしょうからね。 そうなのでしょうが、税収に響くから再開するというのもおかしな話で、やはり安全安心が担保できるようにすることが大切です。―― そうは言っても、いつ再開されるかわからなければ事業計画も立てようがないでしょう。 もちろんそうです。ただ、われわれの基本スタンスは、いつまでの再開を目指すというような目標は持たないということです。1つ1つのことを着実にやっていく。目標化すると、必ずどこかに焦りが出てきてしまう。そうするとやはりどこかでミスが出る。そのミスをカバーするためにまた時間がかかる。それよりも、まずやらなければならないことをしっかり手を抜かずにやる、そういうことです。 では、自然にまかせてどうするか、経営計画はどうするのか、ということになると思いますが、シミュレーションはやるわけです。今年度いっぱい稼働できなかった場合どうなるか。さらに長引いたらどうか、さまざまなシミュレーションを行っています。そうしなければ、たとえば燃料調達をどうするか対応できない。再開までに1年間かかったらどのくらい石油を買ったらいいのか。その資金はどうするのか。そういうシミュレーションを行っています。バックナンバー温暖化対策、税負担議論を - 2008年08月28日経営努力で吸収できず - 2008年06月26日関連サイト東京電力株式会社東京電力 - Wikipedia株価Yahoo!ファイナンス - 9501.t9501 東京電力(株) 東電 NIKKEI NET 株価サーチ株価 9501:東京電力 - Infoseek マネー株価ジャッジ | 東京電力 (9501)