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カテゴリ:本・まんが
惨殺された両親の仇討ちを流星に誓いあった三兄妹。
「兄貴、妹(あいつ)は本気だよ。俺たちの仇の息子に惚れてるよ」 14年後――彼らが仕掛けた復讐計画の最大の誤算は、妹の恋心だった。 (講談社BOOK倶楽部より) (ネタバレしてます。) 両親を殺害された三兄妹が身を寄せ合い、生きていくために詐欺を重ねていく。 詐欺の手口は臨場感もあり面白い。 警察をはめていくニセ証拠作りも良くできていると思わせる。 静奈が行成に恋をしてしまう過程も全く無理なく読めて、いつ好きになったのか読みながら気付かないほど違和感なく、好きになって当然だよな~と納得させられてしまいました。それだけ行成の人物像が魅力的だったと思います。 ハヤシライスの味がキーポイントになっているのも面白い趣向だと思います。 ラスト50ページぐらいになっても鈍いわたしは犯人が誰なのかわからず、真犯人がわかったときには「あっ」と驚きました。 そのくらい面白く読めていたのですが、犯人の動機を知った時、一気に気持ちが萎えてしまいました。 作者は、200万円も一度に必要とする病気・手術とは何を想定していたのでしょうか。 現在、心肺移植でも150万円、自己負担額はその3割。(他にも想定し得る病気はあるかもしれませんが、とりあえず高額であろう手術はこのくらいしか思いつきませんでした。)入院諸経費込みになるともちろんもっと多額になるでしょうが、自由診療でもないかぎり200万円の負担とはちょっと思いつきません(公的な援助があるはずです)。外国で、となると200万では到底済みません。 (以上はわたしの考え得る範囲での話ですので「いや、実際そのくらい一度に払ったし、破産しかけた」という実例があるようでしたら全くのわたしの認識不足です。) それにお金が準備できないからといって「○○までに入金しないと手術しません」という状況は今の日本ではちょっと考えられません。 病院の事務なり役所に相談というのが第一の選択肢でしょう。それを窺わせるような描写は見当たりません。 かりに200万円必要だとしても、柏原は警官で公務員。ノミ屋に手を出すような一介の町の洋食屋に借金しようという必然性がわかりません。かなりの給料を貰ってるだろうし、何よりいくらでもまっとうな方法で借してくれるところがあるでしょう。 これまでの長い入院のため、借りられるところからは借りつくしたということでしょうか。それならば、今回200万円強奪(当初は借りるつもりだったとしても)してもこれからもっと必要になることは目に見えています。そのお金はどうするつもりだったのでしょうか?その時は誰から借りるつもりだったのでしょうか?また犯罪をするつもりだったのでしょうか?ただその場をしのげればいいという考えしかなかったのでしょうか?そうであるならば親としても警官としても無責任としか思えません。 それに、それだけお金を必要としている人が、癖で素振りをしてしまうくらいゴルフをしてるってどうなんでしょう? 要するに犯人像に一貫性がない。 「病気の息子のため、と言えば読者は納得するだろう」「ゴルフの素振りで犯人が判明するというどんでん返しありき」という安直な考えが見え隠れして「あ~ぁ」って感じでした。 すべて現実に即した説明がなされるべき、とは思いませんが、少なくとも「確からしさ」というか、説得性、説得性を持ちうるだけのリサーチや表現方法は考えないとだめでしょう。 それ以外の部分が精密に書かれているだけに、なおさらわたしにはその「確からしさ」を感じることはできませんでした。 そういう意味で本作はわたしにとっては評価できるとは言い難い作品です。 ※ブログ内関連記事 「流星の絆」 原作:東野圭吾 『流星の絆』東野圭吾 流星の絆 2008年第43回新風賞受賞 発行:2008年 発行所:講談社 価格:\1785(税込) 流星の絆 DVD-BOX 『流星の絆』(TBS) 放送日:2008年10月17日~12月19日 金曜22:00~22:54(全10話)※初回及び最終回:22:00-23:09 演出:金子文紀、石井康晴 原作:東野圭吾 脚本:宮藤官九郎 出演:二宮和也、錦戸亮、戸田恵梨香、要潤、柄本明、設楽統、寺島進、りょう、中島美嘉、三浦友和、他 2008年10月クール第59回ザ・テレビジョンドラマアカデミー賞最優秀作品賞 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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