文楽『一谷嫩軍記』
「平家物語」の中でもことに有名な平敦盛最期の場面を描いた『一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)』と これまた有名な「八百屋お七」のクライマックスシーン『伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)』を鑑賞して参りました。実は昨日からずうっとどうやってこの2作品をまとめようか、と悩んでおりました理由は「平家物語」のストーリーがあまりにも破綻しているからではまず、その完全破綻劇場から。『一谷嫩軍記』 あらすじ平経盛(つねもり)に代わり陣を固める平敦盛(あつもり)は齢15,6の、まだまだ年端もいかぬ若武者ではあるものの貴い院の血を引く、見目麗しく勇敢な若者。そこへ攻め込んで来たのは初陣を飾ろうとする源氏方の筆頭武者・熊谷直実(なおざね)の嫡男・小次郎。血気盛んな小次郎は、平山という卑怯者の武者所に煽られて無謀にも一人敵陣に突入。追ってきた父・直実に助け出されます。それを追って出た敦盛に切り立てられた平山は、須磨浦へと遁走しますがそこで敦盛の許婚である玉織姫と行き会います。姫は陣を出た敦盛を心配して浜まで探しに出ていたのでした。以前から姫に横恋慕していた平山は、敦盛はたった今自分が手にかけたと嘘をつき、自分の妻になれといいますが姫は夫の仇と切り掛かります。思い通りにならず怒った平山は姫を斬りつけますが遠く聞こえる鬨(とき)の声にまたも慌てて遁走します。そこへ敦盛が兵舟に乗ろうとやってきますが、追って来た直実に呼び止められ、馬を返して一騎打ちになります。そのまま組み伏せられた敦盛は、覚悟を決め、首をはねるよう直実に言います。その高貴なたたずまいに「もしや」と直実が名を訊ね、やはりと合点。自分の息子と丁度同い年、しかも院の血を引く者と知り、彼ひとりを逃したところで源氏の勝ちに変わりはないと、敦盛を逃がそうとします。が、それを平山が見とがめ、二心と罵ります。直実は、敦盛にも促され、断腸の思いで平敦盛の首をはね、勝鬨を上げます。と、岩場の陰に倒れていた瀕死の玉織姫が夫の名を聞きつけて起き上がります。もう見えぬ目で、せめて夫の首を、と探す姫に、敦盛の首を渡す直実。姫はその首を抱きしめながら息絶えます。それを見届けた直実も泣きながら敦盛の遺骸を馬にくくりつけ、首を持って帰還します。後日、須磨の直実の陣に、直実の妻・相模が小次郎を案じて訪ねてきました。と、そこへ藤の局がやってきます。藤の局の息子・敦盛を討った直実が、相模の夫であると知り、驚く両者。相模は過去に、藤の局に、直実との不義を助けられた恩があります。「恩を忘れてはいまいな、仇討ちに協力せよ」との局の言葉に頷くしかない相模。突如、自分に切り掛かる女に驚く直実でしたがそれが敦盛の母と知ると、その立派な最期を話して聴かせるのでした。「皆が逃げる中をひとり立ち戻って一騎打ちするなど、武士の鏡」と褒め讃える相模に、涙ながらに納得する藤の局。その後、すぐに義経に首実検にいかねばならぬ、という直実にせめて首だけでも一目会わせてと縋る局。相模も口添えしますが、直実は『実験が終わるまでは誰にも見せるわけにはいかない』と頑として受け付けません。そこへ義経が登場します。直実が急にいとまごいを言い出したので、おかしいと思って様子を見に来たという義経。くしくも相模と局の目の前で首実検が行われることになります。覚悟の直実が「ご覧あれ」と箱のひらくとなんと、そこに置かれていたのは直実の子・小次郎の首!何か叫ぼうとする相模と押し掛ける局をおさえつけ、「間違いないか」と義経に問うと、義経は「間違いない。よくぞ自分の本心をわかってくれた」と直実をねぎらいます。陣の前には、見事な桜の前には「一枝刈らば、一指を切るべし」という立て札が立てられていたのですがそれは、桜の枝を追ったら指を切りおとすぞ、という庶民への訓告に隠した義経の、院や平家側への心遣いだったのです。それを隠れて聞いていた平山が「敦盛はまだ生きている!」と騒ぎ立てるとしょっぴかれていた石屋の親父が手裏剣で仕留めます。彼は平家の残党で、かつて義経親子を助けた男だったのです。男の正体を見抜いた義経は「敦盛の遺品の鎧だ」といって桶を男に託します。が、その中には死んだ筈の平敦盛が隠れていたのです。かつての自身の恩を返した義経に感服する男はそのまま桶を背負い、京を出ます。家の誉れのために、大切な息子を亡くしたことにこの世の無情を感じた直実も、出家をし、京を後にするのでした。・・・一見、涙、なみだのお話なのですがちょっとまて。泣く泣く首をはねたはずの若武者が最後の最後でなにゆえに生き残っているのだ?たっぷりまるまる一段,小一時間も使っての涙ながらの須磨海岸での「忠義馬鹿」劇はすべて脳内妄想だったというオチなのか??あのとき、直実は、たしかに平敦盛の首を小脇に抱えて帰っていたぞ?あの時点で息子と入れ替わっている、ということはありえないし、いったいぜんたいどうなってるの??それとも、ストーリーの支離滅裂なんて関係なくただただ、涙なみだで感動できればそれでいい、ってこと?おもしろければなんでもありなの??死人でも生き返るの??@@いろんな意味で、何て素晴らしいんだ!VIVA!!文楽!!!(爆)長くなったので『八百屋お七』はまた次回~♪