翌日、エリスはシンとともにパーティーの準備をする為、朝食後すぐに王宮へと向かった。
「あら、早く来てくれたのね。」
シンはそう言ってエリスを見た。
「パーティーまで時間がまだありますので、招待状を書き上げておこうと思いまして。」
「助かるわ。」
エリスはシンの部屋でパーティーの招待状を書き始めた。
すぐ終わると思っていたが、次第に目と腕が疲れ、エリスは思わず溜息を吐いてしまった。
「少し休みましょうか。残りはお昼を済ませた後で書きましょう。」
「ええ。」
シンとエリスは気分転換に中庭を散歩することにした。
「ねぇエリス、アレク様のことなんだけれど、夜遊びにはちゃんとした理由があったのよ。」
「ちゃんとした理由?」
「ええ。ここだけの話なんだけどね・・」
シンが次の言葉を継ごうと息を吸い込んだ時、2人の方へと近づいてくる足音がした。
「ユリノ様、おはようございます。」
そう言ってシンに優雅な宮廷式の挨拶をしたのは、社交界デビューを果たしたばかりのとある男爵家の令嬢だった。
「おはよう、あなたも随分早いわね。」
「ええ。早く社交界に慣れようと思いまして。そちらの方は?」
令嬢の蒼い瞳が、ユリノの隣に立っているエリスを捉えた。
「彼女はエリス、わたくしの大切なお友達よ。」
「まぁ、そうなんですの。初めましてエリス様、ナディーヌと申します。」
そう言ってエリスに微笑んだ令嬢は、少し彼を値踏みするかのようにじろりと見ると、2人の元から去っていった。
「なんだか嫌な感じの子ですね。どこか野心的というか・・」
「多分あなたに嫉妬しているんじゃなくて? 気にしない方がいいわよ。」
その後、2人はパーティーの準備に戻り、なんとか招待状を書き上げた。
「やっと終わったわね。」
「ええ。次は料理の手配ね。また明日も来てくれるかしら?」
「勿論ですとも。」
シンと別れ、王宮の廊下を歩いていたエリスは、中庭で見かけた令嬢―ナディーヌが数人の令嬢達と何かを話しているのを見た。
(嫌な感じだな、やっぱり)
エリスが彼女達の前を通り過ぎようとした時、ナディーヌと視線がぶつかった。
彼女は不快そうに鼻を鳴らすと、友人達とともにエリスとは反対側の方へと歩いて行った。
(嫌な子。)
エリスはナディーヌのことが一目会っただけで嫌いになった。
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