久しぶりに笑う
苦虫を噛み潰した表情で毎日を過ごしているわけではないのだが、さほど面白いこともないものだから笑うことは少ない。年度が終わり、去る人の涙や嬉しさや悔しさを一日たっぷりと堪能して帰宅。赴任地より戻る妻を待ちながら、息子と夕食を終えて後、手近にある棚から随分前に読んだ本を引き抜いた。「言葉は連動する 事件の現場」蓮實重彦のページを開く、「『地獄の黙示録』から」という大岡昇平との対談を読み進むうち、話は漫画の話になる。萩尾望都「地球(テラ)へ」から“ベルバラ”へ、そして「タブチくん」まで話が及んで終わる当時まだ若い著者と、戦争を経験した老人の話は、現在朝日新聞朝刊四駒漫画を連載する作者による「タブチくん」のデフォルメした顔を思い出させ、この二人が、どのよううなシチュエーションだったかは知らないが、かような話題に行き着いて二ページに渡る会話の記録を残したことに笑みが漏れ、大きく笑うこととなった。笑いが健康によいから「ワッハッハッハ」とはしたくないし、落語は聞き惚れて笑う暇が無い、ニヤッとすることはあるものの、腹から笑うって、どういうことだったっけ。