カテゴリ:シネマ/ドラマ
NHK大河ドラマ「天地人」の最終回のラストシーン近くで、主人公・直江兼続が隠居して、妻・お船(せん)と連れ立って郷里の越後(新潟)に冥土の土産の旅に出る。
そこで、自分たちを育んだふるさとの滋味溢れる光景に包まれて、深い感動に言葉を失う。 ほぼ映像だけで語る、心象風景的な涙のラストシーンといえば、例えばあの名作映画「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」(山田洋次監督)を思わせる。 なお、全編を通じて、大島ミチルさんの場面場面に対応した入魂の音楽が、終始見事に鳴り響いていて、本当に心に沁みた。 今年の大河の音楽は、特筆大書されるにふさわしい出来だったと思う。 最初の頃から何度も伏線として張られてきたキーワード、「肝心かなめの幹を守るために美しく散るという“紅葉(もみじ)の家臣”」の譬えが語られる。 これらは史実とは到底思えないが、それはこの際どうでもいいだろう。完全にドラマとして許容限度内の脚色。 ・・・しみじみとした情感が溢れて、いいシーンだったなあ。 思わず僕も、久しぶりに女房と鬼怒川温泉あたりに湯治に出かけたくなった 最後は、郷土愛を絡めつつ、定番の夫婦愛に持ち込んだというところだが、やっぱりこれは安心立命、日本人の魂のふるさとであり、当然泣けた泣けた。 最期に「死に水」を取ってくれるのは配偶者、男にとっては妻である。お互い、くれぐれも奥さんは大事にしませうね さて、今回の大河については、多くのドラマ目利きの皆さんのブログなどを覗くと、「いろいろなテーマやモチーフを盛り込みすぎて、焦点がぼやけた。」という評が多いように見受けられる。また、「脚色し過ぎ(話を作り過ぎ)だった」という意見も多い。 歴史通の方々からは、かなり評判が悪い。 あまりの悪評嘖々(さくさく)ぶりに、若干ビビるほどである。 なるほど、言われてみれば、僕もある程度同感するところもある。 愛、義(儒教的イデオロギー)、主従・夫婦・親子の絆、また、地方政治(上杉家内)における権力継承・統一過程やら、中央政治、特に戦国末期の動乱と天下統一の過程。 あまりにも様々な事象を詰め込みすぎて、やや散漫だった印象は確かにあった。 極力「夫婦愛」の一点に絞り込んだのが印象的で今なお記憶に新しい「功名が辻」などと比べると、確かに少々テーマが拡散していたのは否めないと思う。 ・・・が、これは秀吉の子飼いとして手取り足取り導かれ、その後は鮮やかに寝返って家康に忠誠を誓い可愛がられ、比較的分かりやすい動きで戦国を生き抜くことが出来た山内一豊と、天下の形勢をもうかがう大大名・上杉家の執政であり、あらゆる深慮遠謀の渦中にあった直江兼続との格の違いにもよるものであり、やむを得ない面もあったのだろう。 だが、若き名優・妻夫木聡の、苦悩する表情や、それと裏腹の満面の笑顔も似合う品格溢れる二枚目ぶりが、全ての場面で生き生きと画面を統一していた。 ・・・何はともあれ、すばらしい一年間だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年11月25日 15時21分21秒
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