松尾芭蕉 旅寝してわが句を知れや秋の風
松尾芭蕉(まつお・ばしょう)旅寝してわが句を知れや秋の風『野ざらし紀行』私の発句は身にしむ秋風の中で旅寝をしたことがある者にしか本当は分からない。どうかあなたも漂泊さすらいの旅をした上でわが句を味わってほしい。註生前すでに俳諧の巨匠として全国津々浦々にその名が轟いていた作者は、行く先々で崇拝者・素封家・金満家たちの熱烈歓迎を受ける大スターだった。彼自身も、宗匠としての責任感もあって甘受していたのだろう。だが、これは違うんだ、本意ではないのだ、私の俳句は、もののあわれの侘わび寂さび軽かろみ萎しおりを詠んでいるのだと抗あらがい諫めているような、メッセージ性の感じられる珍らかな逸品。詩歌・文学に親しむ者が拳々服膺すべき真理を含んでいる。 奧の細道行脚之図(芭蕉と河合曾良) 森川許六筆ウィキメディア・コモンズ パブリック・ドメイン * 画像クリックで拡大。