カテゴリ:子規玩味
正岡子規(まさおか・しき)
裏口の木戸のかたへの竹垣にたばねられたる山吹の花 小縄もてたばねあげられ諸枝の垂れがてにする山吹の花 (小縄で束ね上げられて、たくさんの枝が垂れにくいようにされた山吹の花。) 水汲みに往来の袖の打ち触れて散りはじめたる山吹の花 まをとめの猶わらはにて植ゑしよりいく年経たる山吹の花 (今はもう妙齢の隣の娘が、まだ幼い子供だった頃に植えてから、何年経ったのだろう、この山吹の花は。) 歌の会開かんと思ふ日も過ぎて散りがたになる山吹の花 我が庵をめぐらす垣根隈もおちず咲かせみまくの山吹の花 (わが庵を巡らせた垣根に、隈もないほどに咲かせてみたい山吹の花。) *「みまく」は「みまくほし(き)」(見たく思う)の省略形。 あき人も文くばり人も往きちがふ裏戸のわきの山吹の花 (出入りの商人も郵便配達人も行き違う、裏戸の脇の山吹の花。) 春の日の雨しき降ればガラス戸の曇りて見えぬ山吹の花 ガラス戸のくもり拭へばあきらかに寝ながら見ゆる山吹の花 春雨のけならべ降れば葉がくれに黄色乏しき山吹の花 (春雨が連日降り続いて、葉蔭に黄色の乏しい山吹の花。) * けならべ:「日並べ」。「連日」の意味の上古語。 明治34年(1901)晩春、東京・根岸の自宅(子規庵)で、不治の病床に臥して詠む。 歌集「竹の里歌」(明治37年・1904) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年05月23日 16時27分11秒
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