カテゴリ:俳句ちら読み 逍遥遊
与謝蕪村(よさ・ぶそん)
五月雨や大河を前に家二軒 梅雨が降り続いて氾濫しそうなほど増水した大河のほとりに ぽつんと心細く家が二軒寄り添っている。 註 明治の俳句・短歌の巨人・正岡子規が、当時所属し担当していた「新聞日本」紙上の文芸欄で、こともあろうに芭蕉の代表的名句の一つ「五月雨をあつめて早し最上川」を引き合いに出した上で、こちら蕪村に軍配を上げて絶賛し世間に衝撃を与えたことは、司馬遼太郎「坂の上の雲」にも描かれた事実だが、今その主張を聞いても、おそらく贔屓目に見ても贔屓の引き倒しだろうと思われ、今でいう「褒め殺し」(?)に近いものさえあると思う。 確かに、「あつめて」の主語は「最上川」ということになるだろうから擬人化であり、発想がやや平凡で俗に堕ち、陳腐であるといった反発を感じる研ぎ澄まされた感覚があり得るのは首肯できるのだが、この場合、ちょっと格が違うだろう格が~(・・・ほんかくてきよ、ほんかくてき~)と思うのが正直なところである ・・・とはいうものの、俳句・短歌革新の実作者であると同時に、いわば新時代を切り拓く志を高々と掲げたアジテーター(煽動者)でもあった子規の時代背景を見れば、この一句の持つ近代文学的な写実・リアリズム的な側面に感応し、その辺を強く評価したのだろうと、今の目では評価しうるのだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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