カテゴリ:新古今夢幻
藤原定家(ふじわらのさだいえ、ていか)
梅の花にほひをうつす袖の上に 軒洩る月のかげぞあらそふ 新古今和歌集 44 梅の花の彩りを映し 妙なる香りを移す袖の上に 軒先を洩れてきた月の光が争っている。 註 にほひをうつす:「(視覚的な)色彩を映している」意味と「(嗅覚上の)芳香を移している」の両義が掛かっている、名人芸的な練達の技巧 virtuosity。 軒洩る月のかげぞあらそふ:軒端の梅を漏れて来た光が、風に揺れて袖の上で争っている(ように見える)。 かげ:中古までは「光」の意味。「光」という漢字を「かげ」と訓じることも多かった。近現代でも、文語的な言い回しでは光の意味に用いることがしばしばある(「星影」、「影射す」など)。やがて、光が映し出す形の意味から「陰、翳り」の意味を生じ、「影」の字もろとも意味が180度変わってしまった。日本語では珍しい例である。もとの意味は、動詞「光る」の連用形である「光」に取って代わられた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015年02月13日 11時13分21秒
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