読売歌壇 12月21日付
読売歌壇 読売新聞12月21日付より (*は、くまんパパ寸評)岡野弘彦選川崎市 大同きみゑ母の名は「こはる」と言ひき霜月の小春日和の日々を母恋ふ* 岡野氏評によれば、作者は94歳だという。ほのぼのとした中に人生の味わいを感じさせる佳作。「霜月」は11月のこと。京都市 高橋雅雄穴の開いたアルマイト弁当まん中に梅干し入れて行きし学校小池光選東京都 加藤あんぷおおつぶの雨にうたれてわらいだす何に勝とうとしてたんだろう佐賀市 草下弓子もう一度振り返ってみる扉とは開かれるためそこにあるのだ* 象徴的、暗喩的、黙示的表現。意味は曖昧模糊としているが、これでいいのだ。十和田市 久米新吉校庭の今朝の雪にはみちくさをせし山兎の足の跡あり* ルビは振ってないが、たぶん「山兎」は「のうさぎ」と読ませるのだろう。爽やかな叙景の歌。久喜市 深沢ふさ江風のやうに過ぐるマラソンの集団を見送つてゐる大根だいこ抱へて*「大根だいこ抱へて」が、まさに表現のドツボ。これで歌になっている。栗木京子選横須賀市 浜口祥子ようやくに熱の下がりし幼な子は椅子に坐りて医者の真似する* お孫さんだろうか。痛々しくていとおしい。いわば「いたおしい」?瑞穂市 渡部芳郎思ひ出し笑ひにあらむ風抜ける向かひのホームに妊婦微笑む俵万智選弘前市 竹内正史ぬけ道のある林檎園に少年の友を呼びゐる甲高き声大垣市 岡田薫人類が滅ぶ映画を見た後に君とカレーを食べる幸せ* 話題のSFXディザスター映画「2012」か。時事的要素を盛り込んで楽しい。八千代市 諏訪俊一会話なき住まいをいでて物言わぬスポーツクラブのマシーンと真向う