小野小町 花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に
小野小町(おののこまち)花の色はうつりにけりな いたづらにわが身世にふるながめせし間に古今和歌集 113 / 小倉百人一首 9うるわしかった桜の花の色は衰えてしまったのね。虚しく徒いたずらにわが身が世の中に古びてゆく。降る長雨を眺めながらもの思いに沈んでいた間に。註ネガティブな内容ではあるが、その寂寞に徹した侘び寂びと卓越した技巧によって和歌史上不朽の名歌。うつる:うつろう。衰える。な:詠嘆や念を押すニュアンスの終助詞。~のね。のだなあ。ふる:古語動詞「古ふる、経ふる」(現代語「経へる」の語源)と、(長雨が)「降る」が掛けてある。ながめ:動詞「ながむ(眺める、物思いに耽る)」の連用形と、名詞「長雨(当時は「ながめ」と読んだ)」の掛詞かけことば。写真:栃木県宇都宮市・八幡山公園にて筆者撮影。