紀友則 ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
紀友則(きのとものり)ひさかたの光のどけき春の日に しづ心なく花の散るらむ古今和歌集 84 / 小倉百人一首 33大空の光ものんびりのどかな春の日になぜ落ち着きもなく桜の花は散るのだろう。註千年の時を超えて、本当にそうだよなあと思わせる名歌。ひさかたの:もと「天(あめ、あま)、空」にかかる枕詞(まくらことば)で、転じて「日、月、雨、雲、光、星、夜」など天象に関わる語に冠し、さらに「都、鏡」などにかかる。語源は「久堅」(永久に堅固に存在するもの)などとされる。下二句は、「など、などてか」(なぜ、どうして)、などの疑問語が省略された形と解され、文脈からこれを補って読むのが定説。しづ心:穏やかな心。静謐な、落ち着いた心。「しづ心なく」は、おそらく「ひさかた」と対比されている。